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【2003年10月 渡良瀬有情】

皇海山へ

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬川の源流に位置する皇海山(すかいさん)は栃木と群馬の県境に広がる足尾山塊の主峰(2144メートル)である。深田久弥氏の「日本百名山」の一座として知られ、登山者の人気が高い。

 しかし、従来の庚申山ルートは行程が長く、一般的でなかった。1995年に、群馬県利根村の栗原川林道が、自由に通行できるようになり、皇海山へは登りに約3時間と約3分の1に短縮されて、東京から日帰りできる近さになった。

 ただし、この林道は冬季は閉鎖。災害や道路工事などで通行止めの場合があるので、事前に利根村役場企画観光課(0278・56・2111)に確認することが必要。

 9月下旬、この林道を利用する「不動沢コース」で皇海山に登った。利根村追貝から登山口の皇海橋まで約20キロで車なら1時間。早朝なのに車約20台が駐車していた。日本百名山の標識や立派な案内板やトイレが、新設されていた。

 登山口から不動沢に入る。このルートは不動沢のコル(鞍部)まで山登りというより沢登りだ。台風15号の影響で水量を増した沢を歩く。標識はしっかりしていた。沢は変化に富み、歩くのが面白い。沢の終点が水場で、皇海山の水は実においしい。ここから苦しい直登を10分ほどがんばると不動沢のコルに出る。庚申山からのルートに合流し、栃木県に入る。原生林越しに、鋸山が美しい姿でそびえていた。

 このコルから皇海山の山頂まではオオシラビソ、シラビソ、コメツガ、ダケカンバの森である。途中でこの樹林の立ち枯れが広範囲で見られた。この異彩を放つ光景は奥日光の白根山や富士山の富士スバルライン四合目の立ち枯れと似ていた。その原因は、酸性雨や樹木の水ストレスやオゾンの大気汚染などとされるが、解明されていない。

 樹林の間から、松木沢の荒涼とした岩肌や鋸山、庚申山、袈裟丸山、赤城山の山並みも望める。

 山頂に着く。樹林に囲まれ展望は良くないが、紅葉が見られた。小さな秋にようやく出会い、疲れが少し和らいだ。「渡良瀬川水源碑」の標柱があり、近くに大きな青銅の剣が建っていた。明治26年奉納という。

 皇海山は魅力的で、いい山だった。不動沢のコルでは携帯電話が通じた。雑音混じりだったが、都会の声が遙かなる秘峰の森に届いた。不思議な思いに駆られた。

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