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【2003年12月 渡良瀬有情】

ヨシ刈り

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地の冬の風物詩であるヨシ刈りが今月から始まった。遊水地の約半分の面積1500ヘクタールに広がるアシ原が刈り取られていく。冬の日に、堤防からヨシ刈りと富士山を望む光景は、自然と人間の営みを語る日本の原風景のようでいつも心を癒してくれる。

 刈り取ったヨシ(別名アシ)は地場産業のヨシズ作りに使われる。遊水地を撮影して12年になるが、ヨシ刈りが終わる3月中旬になっても、刈り取られないで残るヨシが毎年増えているように思う。

 ヨシ刈りのいまをヨシズ生産業者などで組織する「渡良瀬遊水地利用組合連合会」(約1200人)の田中逸郎会長(74)に聞いた。

 田中会長は「最盛期は昭和30年代から40年代で、平成になるまでは良かった。ヨシ刈りする農家は約800世帯あったが、いまは10世帯ほどに減少した」と話す。その理由は、安い中国産が輸入され、採算が取れなくなったためという。

 最盛期の出荷量は年間約50万枚だった。一枚は3m60cm×2m70cmと3m60cm×3m60cmの二種類。約3500円で問屋に卸され、作れば作るだけ売れ、東京では約1万円で販売された時期もあったという。現在の出荷量は約2万枚に減少し、最盛期の四%にすぎない。価格も約2000円に下がった。「ヨシズを作っても利益が出ない。後継者がいなくなる」と田中会長は心配する。

 ヨシズは、風通しは最高にいいので夏の日よけに利用されている。特にシイタケ栽培に多く活用される。シイタケは昔、山村で栽培されたが、今は畑で行われる。ヨシズで直射日光を避け、山村と同じような状態にするのだ。ヨシズ農家の松本八十二さん(62)は「遊水地のヨシは品質がいいので、長持ちする。全国から注文がきている」と話す。中国産に比べて、倍ぐらい保つという。

 シイタケ栽培に必要なヨシズだが、田中会長は「以前より注文が少なくなった」と語る。中国産の乾燥シイタケが多く輸入され出したからだ。ヨシズもシイタケも中国産におされた。

 遊水地はヨシ刈りをすることでアシ原の自然環境が保持されてきた。ヨシズ農家などが毎年3月中旬に実施するヨシ焼きは貴重な植物を育んでいる。いまヨシズ産業が衰退し、アシ原の自然保全が危ぶまれている。市民団体「わたらせ未来基金」はアシを足尾の緑化事業に活用することに取り組み始めた。ヨシ産業が元気になってもらいたいと思う。

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