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【2004年4月 渡良瀬有情】

春の日

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地のゴルフ場の南にある大沼で、春の朝を迎えた。先月20日のヨシ焼きから9日目だった。焼れ野と燃え残った枯れヨシが沼を取り囲む。ここは遊水地で最も美しい水辺空間が見られ、心を癒してくれるオアシスのような場所だ。

 2002年発行の藤岡町史・渡良瀬遊水地の自然編には「大沼とその周辺は調節池化事業前の遊水地の景観を色濃く留めている一帯」、「高い自然度が保持」と紹介されている。大沼と呼ぶには小さい沼だが、昭和34年以前の地形図には、大きな沼があり、その名残だろう。

 この日の夜明けは魅力的だった。春霞の中、大沼からほんのりわき立つ川霧の向こうから、墨絵のような日が昇った。朝焼けの空が、薄紫、だいだい、黄色と変幻し水辺に色を染めた。

 静かな水辺に響く野鳥の朝のコーラスも心地よかった。日の出30分前、「ケーン、ケーン」とキジが一番早く鳴いた。5分後、「ピチュリ、ピチュリ」とヒバリが一斉にさえずり始めると、「ホーホケキョ」とウグイスも。しばらくしてホオジロの「一筆啓上つかまつり候」とカルガモの「グァグァ」が続いた。春ならではの情景だった。

 このように豊かな自然環境が広がるアシ原に魅せられる人は多い。私もその一人だが、昨年初夏、NHKのさわやか自然百景「渡良瀬遊水地」を取材した(株)GENのディレクター柴田佳秀さんも再び訪れた。ネイチャーのベテランカメラマン佐久間文男さんがハイビジョン撮影を担当し、1月から3月まで番組のロケを行った。私も少しばかり同行した。

 今冬はコミミズク、ハイイロチュウヒなど猛きん類が身近に現れ、土手には平日でも五十人を超す野鳥愛好家が集まる人気。柴田さんらは、バルーンに乗り、上空から鳥の視線でアシ原を見つめた。「土手から見るとヨシは重なって見えるが、上空からだとすき間だらけ。タカにとって獲物のネズミは丸見えだろう」と驚いていた。

 春を告げるヨシ焼きで燃え広がる真っ赤な炎と黒煙や焼野に突然降り出した淡雪も映像に収めた。一夜明けて、ヨシが焼けた黒い大地から立ち上る幻想的な霧に一番感動したという。

 さわやか自然百景「渡良瀬遊水地 冬」の番組放映は、NHKで今月18日

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