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【2004年7月 渡良瀬有情】

梅雨空を行く

撮影・文 堀内洋助


 きょう2日は満月。午後7時14分に昇り、翌朝午前4時41分に沈む。3日の日の出は午前4時30分なので、太陽と満月が同時に見られる。梅雨空で確率は低いが、今年は梅雨の中休みが多いので期待している。観察場所は、渡良瀬遊水地の中央にある新赤麻橋付近が広い展望でいい。

 栃木・群馬・埼玉・茨城の四県にまたがる同遊水地は、東西約5キロ、南北約8キロ、周囲29キロで、面積約3300ヘクタール。この東西5キロはJR新宿駅から日比谷公園の距離に相当し、南北8キロはJR新宿駅からJR品川駅になる。山手線一周は34.5キロ

 梅雨空で地平線の視界が悪くても、土手から望むこの広々とした風景は魅力的だ。遠くの建物や送電線が霞で消えてくれ、いい自然の情景になる。特に夕暮れは幽玄な水墨画の世界のようで、アシ原から吹く冷ややかな微風は昼間の暑さを忘れさせる。夕涼みの中、きょうの満月の出を雲の切れ間から一瞬でも見られたら至福の時だろう。

 梅雨のアシ原は野鳥の営みにとって、いい場所でもある。東南アジアから夏鳥のサシバ、オオヨシキリ、コヨシキリ、カッコウ、ササゴイ、ヨシゴイなどが毎年渡来して繁殖する。留鳥のオオタカ、モズ、キジ、ホオジロ、ウグイス、カルガモなどと共に夏の遊水地は野鳥の姿でにぎわう。

 ヨシで作った野鳥観察用のブラインドに入り、久しぶりにサシバの子育てを観察した。3羽のヒナは巣立ち間近で大きかった。曇っていたときは1時間に4回ほど餌のネズミやトカゲを運んだ。晴れ間が現れると、餌の回数は半分に減少した。梅雨空の方が餌を捕りやすいのだろうか。

 じっとブラインドにいると、カ、バッタ、カメムシ、オサムシ、ハムシ、テントウムシ、ハチ、アリ、ハエの仲間が近くに寄ってきた。昆虫の多様さは豊かな自然環境の証である。野鳥はこれらの昆虫も食べて生きているのだ。この小さな空間で、数多く見られることに感動した。しかし、オオスズメバチが間近に来たときは冷や汗がでた。

 ブラインドを出てアシ原を歩くと、ハンゲショウが群生していた。葉の下半分が白く、白い花が垂れている。叙情性ある植物だ。

 梅雨空の遊水地は多くの自然のドラマを見せてくれる。また景色は雨に濡れると質感が増し、見慣れた風景も新鮮だ。広大なアシ原の中で、静かに自然と会話したい季節である。

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