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【2004年8月 渡良瀬有情】

渡良瀬の夏

撮影・文 堀内洋助


 「銅ぞ!ゆっくり渡良っ瀬」の大きな交通標識が、渡良瀬川に沿って走る国道122号の群馬と栃木県境にまたがる沢入(そうり)トンネルを抜けると立っている。足尾町の入口にあるユニークな言葉に、いつも心を和ませられる。「渡良瀬」の言葉の響きは心地いい。

 渡良瀬の名の由来は足尾町によると、渡るに良い浅瀬だという。約1200年前に日光を開山した勝道上人が修行の途次にこの地に分け入り対岸に渡ろうとしたが、谷が深く流れが急なので、困っていたところ、浅瀬を見つけ無事に渡ることができたので、対岸の地を「渡良瀬」とした。そして川の名は「渡良瀬川」と命名されたという。

 その場所は神子内(みこうち)川が渡良瀬川に合流する付近で、左岸の地名が足尾町渡良瀬である。いま52世帯109人が暮らす。先月下旬、ここを訪れた。昭和10年に大改修されたコンクリートアーチの渡良瀬橋を渡ると渡良瀬。川岸は「花の渡良瀬公園」として整備され、遊歩道から河原に降りられた。川の流れは穏やかで、ゴロゴロした石を踏み渡るとすぐに対岸に着く。本当に渡るのに良い浅瀬である。川の水は冷たかった。

 渡良瀬の近くに名水があるので立ち寄った。国道122号から粕尾峠に向かう道を約500メートル行った右側にある。足尾町保健所の立て看板の脇に筒から流れ落ちている。冷たくまろやかで実においしい水だ。日光の帰りに立ち寄った家族連れは「飲んでも最高だが、ご飯を炊くときに使うと一番いい」と大きなポリタンクに何個も汲んでいた。

 夕方、渡良瀬川源流の松木沢を望む足尾ダムの展望台に行き、この名水で湯を沸かしコーヒーを飲んだ。ぜいたくな味がした。月が昇り、避暑に訪れたトンボのアキアカネが夕焼け空を大群で舞う。水辺をカワセミが「チー」と鳴いて飛んだ。気温は23度。快適で至福の時間だった。

 足尾ダムに駐車し、松木沢へ歩いた。夏の満天の星空を見るのが今回の目的だった。この沢には煙害で緑がなくなり、荒涼とした岩肌が広がる。月明かりも消え、星が輝きだした。カメラで長時間露光の間、地面に敷いたシートに横たわり天空を見上げた。暗い荒涼とした山に、美しい星空は異彩を放っていた。流れ星は十数個も現れた。

 今月1〜7日までスターウィーク。12日夜にはペルセウス座流星群が極大になる。渡良瀬の夏は足尾の美しい星空に魅了される。

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