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【2004年9月 渡良瀬有情】

ミズアオイ大群落

撮影・文 堀内洋助


 渡良瀬遊水地・第一調節池の谷中橋南の湿地に、ミズアオイの大群落が、美しい青紫色の花を咲かせている。ガマの茂る澄んだ浅い池に株が重なり合いながら水面を覆う。遊水地の植物を研究する栃木県植物研究会員の大和田真澄さんは「これほどの大群落は初めて」と驚いていた。

 ミズアオイはミズアオイ科の植物で、水田や沼や湿地に生える高さ20〜40センチの一年草。8月〜10月にかけて直径約3センチの青紫色の花を総状に多数つける。

 かつては全国に自生し、農家の人には、水田雑草と呼ばれ駆除の対象だった。やがて乾田化や除草剤の使用などで分布域が減少。現在、環境省のレッドデータブックの絶滅危ぐ類で、高い絶滅の危険性にある植物に指定されている。栃木県では渡良瀬遊水地だけで記録される貴重な植物になった。減少は全国的で、滋賀県立琵琶湖博物館ホームページは「近畿では兵庫県に一カ所と滋賀県に一カ所の計二カ所しかありません」と保護を呼びかけている。

 遊水地でミズアオイ大群落が出現した理由を大和田さんは「遊水地では工事で土を掘ってできた湿地に現れる。土の中に眠る昔の種子が、工事で地表に出たためだろう」という。一昨年冬、ここで池が掘られ、昨夏にもミズアオイ群落が見られた。

 以前、谷中村遺跡の役場前に池を掘ったとき、翌年にミズアオイの群落が現れた。二年後も期待したが、ヨシが茂り、見つからなかった。今年の大群落は「ガマに覆われると、来年も見られるかどうかは微妙」と大和田さんは話す。

 群生するミズアオイの後方のアシ原に、旧谷中村の屋敷林が見える。明治政府が足尾鉱毒の沈殿池として遊水地を作る前、ここに谷中村の田園地帯があった。水田雑草だったミズアオイの花はその当時の子孫なのだろうか。

 今月5日の日曜日、大和田さんの植物定例観察会が行われる。集合は午前10時、谷中湖北駐車場の大きなポプラの木の下。参加費は無料。解散は正午ごろ。

 この夏の猛暑で、遊水地に通う楽しみは清涼感あふれるミズアオイだった。普通より1ケ月半早い6月中旬に開花。行くたびに青紫色の花園が広がった。餌を探すヨシゴイやねぐら入りするツバメとシラサギの群れにも出会った。台風16号が通過した日は、澄み切った空に夏と秋の雲が同居していた。ミズアオイ大群落は様々な自然の営みを目撃させてくれる。

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