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【2004年10月 渡良瀬有情】

秋の日

撮影・文 堀内洋助


 秋の夕暮れ、渡良瀬遊水地のアシ原にツバメの大群が忙しく飛び交う光景に出会った。日没後、約10分。薄暮の空が夕焼けに染まるころに突然現れた。ものすごい数が黒い塊で揺れる。遊水地の野鳥を観察する日本野鳥の会会員の内田孝男さんは「密度を推定して約10万羽」になるという。

 ねぐら入りするツバメが集合した瞬間だった。上空の群れは、低空に急降下し、道で観察する私の頭上すれすれに何回も左右に素早く通り過ぎた。翼が風を切る音が聞こえる。アシ原に入るまで約20分間、壮大な光景が繰り広げられた。

 ツバメは繁殖を終えた夏から秋に、アシ原に集団ねぐらを作る習性がある。その規模は数千から数万羽になる。2回繁殖し、最初のヒナをねぐらに連れて行き、親は2回目の子育てに入る。アシ原は餌となる飛んでいる昆虫の宝庫。水辺もあり、ゆりかごなのだろう。先月末までに、遊水地で大きくなったツバメは南へ旅立って行った。

 今日から10月。秋の1日はつるべ落としと言われるように、夕暮れが早まっていく。今日の日没は午後5時25分で、今月31日は4時47分。1カ月で38分間も早まる。9月の42分間に次ぐ早さだ。7月は15分だった。あわただしい暮れに、秋の哀れや寂しさを感じる。

 遊水地は秋の日がいい。朝夕に色を染めるアシとオギの花穂。1年で一番壮観な光景を漂わせる幻想的な川霧。心さわやかにさせる澄んだ空。遠望の富士山。越冬で訪れるワシタカ類など。ハイイロチュウヒとコミミズクのドラマは今年も見られるだろうか。

 この連載は今月で終了となり、11月からリニューアルした「渡良瀬」として再登場します。毎週1回の連載予定です。足尾から渡良瀬遊水地へ流れる渡良瀬川を中心とした流域の四季の移ろいを「今週の1枚」として掲載します。題名は変更となり、現在検討中です。今後ともご高覧いただければ幸いです。

 続・渡良瀬有情は1997年4月にスタートし、7年半が過ぎました。91年4月から1年間連載されたフォトエッセー「渡良瀬有情」(文・立松和平氏)の取材班として訪れてから、約14年になります。この川に魅了され、その後も通い続けた日々でした。取材先や読者の皆さんから多くの助言や激励や共感をいただきました。とてもうれしかったです。あらためて心から感謝いたします。

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