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【2004年12月 渡良瀬有情】

冬の赤城山

撮影・文 堀内洋助


第4回―霧氷―

 渡良瀬川は源流の皇海山(標高2144メートル)など北関東の山々から多くの支流を集めて流れる。深田久弥氏の「日本百名山」の一座として知られる赤城山もその山の一つである。同山の東山ろくから小黒川、寒戸川、鳥居川、猿川、川口川、深沢川などの川が渡良瀬川に注いでいる。

 この水源地の上に鳥居峠があり、同峠近くに覚満淵(標高1360メートル)の湿原がある。先月下旬に訪れたとき、霧氷に出会った。冬枯れの草木に白い花が咲いたような幽玄な光景だった。湿原にわく霧が凍り付いたのだろう。「霧氷咲く」と俳句に詠まれるほどに美しい。斜面から朝日が昇り、白く輝くシーンにも魅了された。日に照らされて約分後、霧氷は消えた。

 渡良瀬を歩いていると、自然が見せる一瞬の美に遭遇する時がある。撮影結果に悔やむことも多いが、その色と光に無心でシャッターを押すことが至福なのだろう。

第5回―冬の月―

 群馬県富士見村の赤城山・鳥居峠でこの冬の夕方、寒々とした空に輝く月に出会った。1200ミリ相当の超望遠レンズでのぞくと、まるで月は大きな風船のようで、冬枯れの森からぐんぐんと昇って行くように見えた。約2分余で直径分移動する。地球の息吹を感じる壮観な一瞬だった。

 渡良瀬を歩いていると、月に心を揺さぶられることが多い。先週は夕焼け空に三日月が美しかった。川辺に車を止め、水の色の移ろいと山に落ちる月に見入った。天地創造のような光景に心癒された。太陰暦が使われていた時代、月は詩歌、俳諧など文学作品に数多く登場した。自然と人間の営みが共存し、月を畏敬の念で見ていたのだろう。

 本紙一面の天気予報欄に、きょうの月、あすの暦がある。時刻を記す小さな記事だが、ここから私には自然の空間が思い広がる。自然に学ぶ大切な窓口だ。渡良瀬に行く前に必ず熟読している。

第6回―朝焼けの渡良瀬川―

 夜明け前、群馬県の赤城山・鳥居峠(標高約1400)に到着する。冬の満天の星が実に美しい。展望台の眼下には大間々、桐生、太田など市街地の夜景が鮮やかに広がる。双眼鏡で望むと東京都心の高層ビル群の明かりまで見渡せる。ここは関東平野を望むビューポイントだ。

 地平線にだいだい色の光の帯が現れるころ、利根川と渡良瀬川の川面が薄紫色に染まった。突然、闇の中から現れた川の蛇行に感動する。この冬数回訪れたが、いずれも気象条件が合わず、写真にならなかった。太陽は筑波山の右方向から昇った。心ときめく朝のドラマに、初日の出はここで迎えたいと思った。

 美しい渡良瀬川の朝焼けだが、かつてこの川は流域の田んぼに甚大な鉱毒被害をもたらした。いま右岸の太田市毛里田(もりた)地区に、足尾鉱毒と農民の百年にわたる苦闘の歴史を刻んだ「祈念鉱毒根絶」の碑が建っている。

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