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【2005年4月 渡良瀬有情】

下流と上流

撮影・文 堀内洋助


第16回目・川霧の季節

 渡良瀬遊水地は今、川霧の季節を迎えている。日の出前にアシ原の水辺から湯気のようにわき上がって漂う。日が昇ると、白い霧は春の光を浴びて赤紫、だいだい、黄と色を刻々と変えていく。朝の短い時間だけに見られる現象だ。自然の営みが作る一瞬の美にいつも心を癒される。

 川霧は一年中発生するが、特に早春から初夏と晩秋の季節が規模が大きくて壮観だ。条件は無風で晴れて冷え込んだ朝だが、期待が裏切られる日も多い。全国的なアシ原の減少で、湿地の川霧は珍しくなった。日本の未来に残したい素晴らしい自然である。

 自然保護団体の日本湿地ネットワークが今月、干潟と湿地保護を呼びかけ、全国でイベントを実施する。遊水地では自然観察会が17日に行われる。午前9時30分に藤岡町藤岡の遊水池会館駐車場集合。植物・野鳥・昆虫の各班に分かれてアシ原を歩く。自然に学び、感動したいと思う。

第17回目・桜とサシバ

 10日朝、渡良瀬遊水地のアシ原で野鳥の声に耳を澄ました。天気は曇り。日の出は午前5時16分。一番早く「ケーン、ケーン」とキジが鳴いた。日の出の約40分前でまだ闇の中だった。数分後「ピチュ、ピチュリ」とヒバリが複雑な声でさえずり始めた。同時に「カァーカァー」とハシブトガラスの声がした。

 春を告げる「ホーホケキョ」のウグイスのさえずりは日の出の約20分前だった。今年はヨシ焼きで焼け残ったヨシの茂みが目立ち、その中から聞こえた。四方から響いた。キジやヒバリの声も一段と大きくなり、ウグイスと協奏曲を奏でるようだった。

 遊水地は四季を通して多くの野鳥を観察できる。栃木県藤岡町史・渡良瀬遊水地の自然編によると約250種が記録されたという。桜の季節を迎えると、東南アジアからワシタカ類のサシバが毎年渡来する。「ピックィー」の鳴き声に春本番を感じる。

第18回目・渡良瀬川の夕霧

 渡良瀬川の上流域は、足尾ダムから大間々町の高津戸峡まで続き、美しい渓谷が見られる。標高差は約500メートルもあり、川沿いを走るわたらせ渓谷鉄道の車窓からは季節の移ろいを楽しめる。14日に訪れたが、桜は大間々から水沼は満開、神戸は五分咲き、足尾はつぼみだった。足尾の見ごろは今月下旬という。

 ある年の晩春、上流域で幽玄な夕霧に出会った。春雨がしとしとと長く降り続いた日没ごろだった。草木ダムの放流で川が増水していた。雨が止み、冷え込んだ時に偶然、川霧が発生したのだろう。植樹デーの足尾の山からの帰り道、車を止めて夢中でシャッターを押した一枚である。

 今月24日、足尾の山に木を植える春の植樹デーが行われる。午前9時30分、足尾ダム手前の足尾町大畑沢緑の砂防ゾーン駐車場集合。今年で10年目を迎える。問い合わせは、足尾に緑を育てる会0288・93・2180

第19回目・足尾の植樹デー

 今年で10年目を迎えた「足尾に緑を育てる会」(神山英昭代表)主催の「春の植樹デー」が24日、栃木県足尾町の大畑沢緑の砂防ゾーンで行われた。過去最高の約1100人が参加し、山の急斜面にミズナラ、コナラ、クヌギなど苗木約4500本を植えた。

 同会は1996年に渡良瀬川流域の5つの市民団体で結成された。足尾と同川下流の人々が、加害者と被害者の関係を越えて連携し、煙害で荒廃した山に緑をよみがえらす活動を始めた。年を追うごとに活動の輪が広がり、昨年は小学生を中心に105団体が体験植樹を実施した。

 毎年参加している作家の立松和平さんは「1本1本木を植えることに価値がある」と感慨深げだった。同会代表の神山さんは「1年目は100本の木を160人で植えた。9年間で2万7000本になった。100万本の木を植えたい」と呼びかけた。10年前、褐色の山の一角が緑に広がっていた。

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