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【2005年5月 渡良瀬有情】

初夏の湿原

撮影・文 堀内洋助


第20回目・トラフズクの子育て

 大型連休入りし、渡良瀬遊水地は青葉若葉の季節を迎えた。旧谷中村屋敷林のケヤキやエノキ、アシ原のヤナギの緑が鮮やか。ヨシの新芽もぐんぐん成長し、緑のじゅうたんのように広がる。枯れヨシとのコントラストもいい。点在する絶滅危ぐの植物ノウルシの黄色い花園も印象的だ。

 5月になると、フクロウの仲間のトラフズクが子育て最盛期になる。十数年前、地元の愛鳥家が繁殖を初めて確認。それまで関東地方では冬鳥だった。標高16メートルの湿地帯での子育ては、自然が豊かな証しであろう。営巣は7〜8カ所もあった。その後、カメラマンが増えたせいだろうか、遊水地周辺に移動した。

 餌はハタネズミやアカネズミなどネズミ類。ネズミはヨシの茎などを食べるため、遊水地は特に多い。貴重なアシ原では絶妙な食物連鎖が見られる。いま夜行性のトラフズクは、闇の中で人知れず飛び回っていることだろう。

第21回目・絶滅危ぐ種チョウジソウ

 ヨシが芽生える渡良瀬遊水地で7日、大和田真澄さん主催の植物観察会が行われた。大和田さんは20年余、同地の植物を調査し約700種を確認。うち環境省レッドデータブックの絶滅危ぐ種が49種も。「首都圏に残された絶滅危ぐ種の宝庫」という。

 この春、NHK「地球・ふしぎ大自然」で放映されたせいか、参加者は約40人と多かった。トネハナヤスリ、マイヅルテンナンショウ、ノダイオウなど絶滅危ぐ種がそこらじゅうに見られた。特に美しいチョウジソウに人気が集った。次回は6月4日予定で、午前10時に谷中村遺跡駐車場のポプラの木に集合。ハナムグラ、ノカラマツがいい。

 「渡良瀬遊水地の野鳥」写真展が今、同地隣接の埼玉県北川辺町、道の駅「きたかわべ」のスポーツ遊学館で開催中だ。古河市の日向野哲夫さんら14人が20点を展示。午前9時から午後5時で月曜は休館。今月29日まで。

第22回目・初夏の湿原

 薫風の季節を迎えて、渡良瀬遊水地の朝が早くなった。今日の日の出は午前4時35分。これから7月中旬までの二カ月間、4時30分前後になる。特に6月5日から夏至の同月21日までが一年で一番早く4時25分。もう4時ごろからほんのりと明るい。早起きする季節になった。

 「カッコウ、カッコウ」と夏鳥のカッコウの声が、静かな朝に響き渡る。まるで高原にいるような心地良さを感じる。アシ原で子育てするオオヨシキリなどに托卵(たくらん)するため、東南アジアから渡来する。例年今月10日ごろだが、今年はまだ姿を見ない。遅れているのだろう。

 朝の観察を終えると、車の中で仮眠することが多い。初夏の日没は午後7時前で、日中は約14時間余にもなるからだ。昼過ぎに何かの気配で起こされると、一変した湿原の風景に驚くこともある。雲の移ろい、雷雨、虹など、予期せぬ出会いに魅了される。

第23回目・ヨシで歌うコヨシキリ

 渡良瀬遊水地で5月中旬、夏鳥のコヨシキリがヨシの茎先に止まり、盛んにさえずっていた。さえずる場所のソングポストは数カ所。絶えず移動しながら雄は、縄張り宣言と雌への求愛のために、一日中さえずり続ける。アシ原に初夏を告げる風物詩だ。

 近くで、コヨシキリより約一カ月早く渡来したオオヨシキリが「ギョギョシ、ギョギョシ」と特徴のある声でさえずる。時々セッカやホオジロやウグイスやカッコウの歌声も聞こえる。野鳥の大合唱は心を癒してくれる。5月中旬から下旬の朝がいい。早朝は夏鳥のササゴイとヨシゴイが飛ぶのも見られるだろう。

 野鳥が子育てするヨシ群落の成長は著しい。この時期は一日数センチ伸びるという。大人の背丈ほどの場所もあるが、まだ腰までが多い。6月始めには、背丈を超えてうっそうと茂る。そのころオオヨシキリがヨシの茎に営巣し、子育てに励むようになる。

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