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【2005年8月 渡良瀬有情】

夏の匂い

撮影・文 堀内洋助


第30回目・渡良瀬川夕景

 台風7号が去った関東地方は7月27日、フェーン現象の影響で強風と厳しい暑さに見舞われた。夕方、足利市の小高い山に登ると増水した渡良瀬川と北関東の山並みがくっきりと望めた。日が沈み、川面に薄暮の空の色が映った。夕焼けと街の灯りが夕景の川を印象的にしていた。

 昔の渡良瀬川はアユやサケやコイが多く獲れる恵みの川だった。明治に足尾鉱毒事件が発生し、毎年のように台風が洪水を引き起こし、下流に鉱毒の被害を与えた。魚が死に、農作物は大打撃を受けた。渡良瀬川の漁業者数は「1881(明治14)年は3000人近くもいたが、1888(明治21)年には800人足らずに減った」(『森よ、よみがえれ』農文協)。

 死せる川の歴史を経て、この川に魚が戻ってきた。昨年は足利市の渡良瀬川漁業協同組合がサケを100匹ほど確認。緑橋付近ではサケが卵を産む産卵床も発見されている。

第31回目・夏の湿地を彩る花

 夏の渡良瀬遊水地を彩るエゾミソハギが見ごろを迎えている。アシ原の日当たりのいい湿地に咲き誇る桃紫色の花園が美しい。花は下から次々に咲いて上に伸びる。ハチの仲間がみつを求めて絶えず訪れていた。旧暦のお盆のころに咲くので、仏前に供える「お盆の花」として知られる。

 もう一つ夏の湿地に咲く魅力的な花はミズアオイ。8月11日、昨年の広大な群落地を訪れたが、一面にガマが茂って発見できなかった。遊水地の植物を研究する大和田真澄さんは「いまガマを刈ると、日当たりが良くなり露出した種子が発芽するのでは」と話す。数株は咲いているという。

 ミズアオイは環境省レッドデータブックの絶滅危ぐ種。遊水地では工事などで土壌がかく乱された湿地に咲くが、翌年にはほとんど見られなくなることが多いという。土の中に眠る昔の種子が地表に現れては消える。自然の営みはロマンに満ちて面白い。

第32回目・シラサギのねぐら

 渡良瀬遊水地の水辺に、シラサギのねぐらが見られるようになった。夕暮れに三々五々集まり、時には「グァー」と鳴き、きりもみしながら急降下で舞い降りる個体もいる。池に広がる小さなヤナギの枯れ木に数十羽ずつ分散して夜を過ごす。まるで枯れ木に白い花が咲いたような印象的な光景に魅了される。

 シラサギは白いサギの総称で、遊水地にはダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギが訪れる。繁殖を終えたシラサギはねぐらを作る。ここの最盛期は9月で例年約300羽前後。10月には夏鳥のチュウサギ、アマサギが南へ帰るので減少する。撮影した今月16日は約150羽だった。

 この池近くにムクドリのねぐらもできた。日没ごろ大群が夕焼け空に飛び回る姿もいい。まもなく北からショウドウツバメが合流し、約10万羽のツバメのねぐら入りも。秋近しアシ原の夕暮れは野鳥のドラマに満ちあふれる。

第33回目・ショウドウツバメ

 夏鳥のショウドウツバメが8月下旬から9月中旬、北海道の繁殖地から南へ渡る途中に渡良瀬遊水地に立ち寄る。アシ原で体力を回復して越冬地の東南アジアに向かう。ここは渡り鳥にとって貴重なオアシスなのだろう。毎年、このツバメの大群に出会うと秋の訪れを感じる。

 「田中正造と新井奧邃(あらい・おうすい)に学ぶシンポジウム」が9月11日(日)午後1−6時、東京都北区堀船2の17の1の東京書籍講堂で開催される。JR京浜東北線王子駅下車徒歩8分。渡良瀬川研究会と新井奧邃先生記念会など四団体が主催。資料代1000円(学生800円)。

 作家の立松和平さんが「私と田中正造」の特別講演。基調報告は熊本大学教授の小松裕さんと哲学者の花崎皋平(こうへい)さん。100年前に、肝胆相照らす仲だった田中正造と深淵なキリスト者新井奧邃の交流と思想を解き明かす。問い合わせは渡良瀬川研究会の赤上剛さん=電048(976)1696=へ。

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