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【2005年12月 渡良瀬有情】

冬めくアシ原

撮影・文 堀内洋助


第44回目・川霧

 冬型の気圧配置がゆるみ小春日和となった24日朝、渡良瀬遊水地は雄大な川霧が発生した。日の出と共に川霧は消えることが多いが、この日は珍しく逆に増え続けた。冷え込んで風が止んだためだろう。アシ原一面に漂う乳白色の光景に魅了された。

 ラムサール条約登録地に期待される遊水地の自然に関しての講演会「渡良瀬遊水池・驚きの野鳥、植物、昆虫たち」が12月18日(日)に開催される。午後1時30分から4時まで。会場は栃木県藤岡町藤岡の遊水池会館。東武日光線藤岡駅から徒歩15分。主催は渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会。

 講師は野鳥のバンディング調査をする深井宣男さんと人見潤さん、新種ワタラセツリフネソウを発見した栃木県植物研究会の大和田真澄さん、昆虫を調査する大川秀雄さん。長年にわたり遊水地の自然を見つめ続ける第一人者の講演は楽しみである。

第45回目・ヨシ刈り

 師走を迎え、渡良瀬遊水地では冬の風物詩であるヨシ刈りが始まる。本格的な作業は今月中旬から来年3月までの約3カ月間。高さ約4,5メートルに成長したヨシ(別名アシ)の大群落は、地場産業のヨシズ作りなどに使われる。

 ヨシズ生産業者などで組織する「渡良瀬遊水地利用組合連合会」(約1200人)の田中逸郎会長は「今年のヨシの出来は平年並み」と話す。遊水地のヨシは品質がいいので長持ちするが、近年安い中国産の輸入で出荷量は大きく減少した。最盛期の昭和30から40年代にはヨシを刈る農家は約八百世帯あったが、今は十世帯ほどという。

 遊水地はヨシ刈りをすることでアシ原の自然環境が保持されてきた。毎年3月下旬にヨシズ農家が実施するヨシ焼きは貴重な植物の生育を育む。ヨシ刈り跡は越冬する猛きん類が餌のネズミ類を捕る狩り場になる。冬のアシ原は自然と人間の営みを語ってくれる。

第46回目・コミミズク

 栃木県藤岡町の遊水池会館で18日、「渡良瀬遊水池・驚きの野鳥、植物、昆虫たち〜ラムサール条約登録地への道」の講演会が開かれた。市民グループ「渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会」の主催。約120名が参加し、遊水地の自然を研究する第一人者の話に聞き入った。

 野鳥の標識調査をする深井宣男さんは「オオセッカなど希少種が生息し、猛きん類が豊富。良好な自然環境が減少する中、駆け込み寺のような要素を持つ」と述べた。大和田真澄さんは植物の絶滅危ぐ種が49種も存在し、全国的に貴重な湿地と訴えた。大川秀雄さんは昆虫の種類の多さは有名で約千六百種以上が記録されているという。

 あらためて遊水地の自然の豊かさを知らされた講演会だった。主催者は2008年の韓国・昌原(チャンウォン)市で開かれる条約締約国会議に向け登録湿地への署名活動を始める予定という。

第47回目・厳寒の朝

 厳しい師走の寒さが続く24日、渡良瀬遊水地で朝を迎えた。気温は零下5度で、通称「新川」の水辺には1。ほどの氷が張っていた。川に設置された小魚を捕る「長袋」の網は霜に覆われて白い。川岸には大きな霜柱が立ち、歩くとさくさくと音がした。

 気象庁は22日、暖冬予想を大幅修正し「寒冬(かんとう)の可能性が最も高い」と発表した。日本列島は広い範囲で大雪となったが、関東地方は晴天が続く。そのためか、遊水地に渡来する冬鳥の猛きん類が多いようだ。全国的に数が少ないハイイロチュウヒの雄が5羽もいる。コミミズクやチュウヒ、コチョウゲンボウも目立つ。

 冬型の気圧配置は強い季節風を伴い、富士山や浅間山、赤城山、男体山、筑波山など関東平野を取り巻く山々を一望させる。足尾山塊から流された雪雲が青々とした冬空に異彩を見せる。厳寒のアシ原に魅了される。

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