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【2006年3月 渡良瀬有情】

春の詩

撮影・文 堀内洋助


第55回目・水たまり

 早春の渡良瀬遊水地は、移動性低気圧が次々に通り過ぎて雨の日が多くなった。歳時記では春雨といい、しとしとと降る細かい雨である。木の芽や花や植物の成長を促す。枯れ枝にびっしりと水滴が付いた情景は美しい。特に逆光で見るとキラキラと輝き、まるで雨の花が咲いたよう。

 春雨が止むと、アシ原の道に大きな水たまりが点在する。いまは舗装された道がほとんどで、水たまりの情景は珍しくなった。昭和30年代の暮らしを展示するミュージアムが都心にあるが、この水たまりはその時代の姿だろう。忘れていた日本の懐かしい風景に心が癒される。

 水たまりは車の通行や歩行には迷惑だが、野鳥にとっていい水場となる。この写真を撮影した2日、長い間観察していると、ホオジロやオオジュリンなどの小鳥が水浴びに現れ、キジとイタチが道を横切った。春雨と自然の営みに魅了される。

第56回目・川霧の季節再び

 渡良瀬遊水地で11日朝、雄大な川霧が見られた。夜明け前から漂い始めて、日の出ごろはアシ原一面に広がり、その後も1時間ほど消えなかった。今年一番見事な川霧だろう。春雨の影響でアシ原が湿潤になり、発生しやすくなった。遊水地に春の訪れを実感させてくれる。

 川霧が消えた後、土手にいると早くも野鳥のさえずりが四方から聞こえた。ヒバリ、ウグイス、ホオジロ、キジなどだ。特に空高く舞い上がり「ピーチュリチュリ」とさえずるヒバリの姿は春を感じる。蝶もひらひらと舞った。だいだい色の姿に黒い紋。ヒョウモンチョウ類だろうか。

 アシ原に点在するヤナギ科の枝は黄緑色になり、新芽もふくらみ出した。春雨が川霧となり、草木を包み込んで成長を促している。遊水地の情景は人にも潤いと安らぎを恵んでくれる。19日のヨシ焼きが終わると、本格的な春到来である。

第57回目・炎上したアシ原

 渡良瀬遊水地で18日、アシ原421ヘクタールが炎上した。午前10時すぎ、栃木県小山市下生井の第二調節池から出火、北西方向に燃え広がり、藤岡町赤麻の第三調節池まで達した。鎮火は午後11時44分。小山消防署によると、出火原因は調査中という。

 一夜明け、アシ原の約3分の1が燃えた遊水地はヨシの灰で黒々としていた。恒例のヨシ焼きは悪天候で、25日または26日に順延となった。小雨降る中、訪れる写真愛好家も多く、「燃えちゃった」と残念そう。厚木市から来た女性は「彼岸で里帰りし、毎年楽しみだったのに」と話した。

 午前7時すぎ、雨が止んで青空が広がった。アシ原を歩くと幹が燃えたタチヤナギがあった。この木は強風でまもなく倒れるだろう。毎年ヨシが焼かれると、弱った木が一本一本消えていく。アシ原の風景の中で気に入った木が無くなるのは寂しい。

第58回目・ヨシ焼き

 栃木・群馬・茨城・埼玉の4県にまたがる渡良瀬遊水地で25日、春の訪れを告げる恒例のヨシ焼きが行われた。主催はよしず生産業者らで組織する渡良瀬遊水地利用組合連合会。午前八時半、広大なヨシ原の各所で一斉に火が放たれると、ヨシは真っ赤な炎と黒煙を噴き上げ、春風を受けて燃え広がった。

 約800度になる炎で上昇気流が発生し、空からヨシの黒い灰が雪のように降り続けた。大きなつむじ風が見られ、炎が渦を巻いて燃え上がる珍しい光景も。火に驚きチュウヒやヒバリ、キジが煙の中を飛んだ。鳥たちは燃え残ったヨシの茂みに移るのだろう。

 壮観な春の風物詩に写真愛好家や家族連れが大勢集まり、カメラを向けていた。ヨシ焼きの目的はいいヨシを育てるためと害虫の駆除。黒く焼けた大地には、新芽がいぶき緑が広がっていく。最初に出る植物は貴重な絶滅危ぐ種のトネハナヤスリという。

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