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【名建築を訪ねる】

心地よい空間 客を魅了 旧小笠原伯爵邸(東京都新宿区)

2008年7月2日

絵・加藤良造

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 地下鉄駅の出口を一歩踏み出すと、目の前に広がる優美なたたずまい。玄関では小鳥をモチーフにした鉄製の装飾が迎えてくれる。中に入ると、壁や床、天井など、どこを見ても、呼吸が感じられるかのように、建物全体が生き生きとしている。現役のレストランとして日々、人の営みがあるからだろう。

 約三千平方メートルの敷地に立つスペイン様式の建築で、鉄筋コンクリート地上二階、地下一階建て。一九二七(昭和二)年、礼儀作法の「小笠原流」宗家として知られる小笠原家三十代当主・小笠原長幹(ながよし)伯爵邸として建てられた。設計は、日本近代建築をリードした曾禰中條建築事務所が手掛けた。

 建物の中心に据えられたパティオ(中庭)やイスラム風のシガールーム、開放感あふれる屋上庭園など、うっかり長居をしてしまいそうな心地よい空間が、訪問者を魅了する。

 戦後は米軍に接収され、その後は東京都が児童相談所として活用。老朽化が進んだため、七五年から閉鎖され、一時は取り壊しの危機もあった。建築の専門家らの要望で解体こそ免れたが、建物自体は荒廃する一方だった。

 “復活”の契機になったのは二〇〇〇年、都が、修復を条件に民間事業者への貸し出しを決定したことだった。五億円ともいわれた修復費が事業者負担とされたことで、実現性が懸念されたが、現在のレストラン「小笠原伯爵邸」を経営する「インターナショナル青和」(渋谷区、竹内秀夫社長)が名乗りを上げた。

 〇二年六月に同社はレストランをオープンさせ、外壁の一部は〇三年までかけて修繕した。〇四年には都が歴史的建造物に選定した。

 「修復は、可能な限り、建てられた当時のものを、そのまま使って行いました」と同レストラン広報の黒滝広美さん。ダイニングには伯爵家が実際に使っていた大テーブルがある。残存しない装飾品や家具も、図面や写真を基に、極力忠実に再現した。竹内社長が自ら、欧州のアンティーク市場を回って調達したものも。

 保存活用は関係者の念願だったこともあり、修復には小笠原家や、学識者らからの協力も大きな力となった。多くの人の思いを乗せてよみがえった建物だ。 (原昌志)

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貸し切りでパーティーも

 スペイン料理レストラン「小笠原伯爵邸」は予約制で、食事の利用客は、邸内が見学できる。ランチは午前11時30分から午後3時、ディナーは午後6時から同11時。少人数で利用可能な個室もある。建物全館を貸し切ってのウエディングパーティーも受け付ける。年中無休。

 なお、建物の細部には、日本的な要素も。2階の一部に窓が低いなど、和風の造りが見られるほか、正面玄関脇には、鬼門よけの猿の彫り物が据えられている。

 都営地下鉄大江戸線若松河田駅の「河田出口」から徒歩1分。東京都新宿区河田町10の10。問い合わせは「小笠原伯爵邸」=(電)03(3359)5830=へ。

 

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