<ひと物語>子どもの潜在能力育む 認可外保育施設運営の博士夫婦・舘野繁彦さん 舘野春香さん

2020年5月18日 02時00分

「自己肯定感を持つ子どもたちを育てたい」と話す舘野繁彦さん(左)と春香さん=いずれも横瀬町で

 鉄骨のフレームと木を生かした開放的な造り。たくさんの絵本が立て掛けてあるガラスの壁面。秩父の名峰・武甲山を見晴らす園舎は、幼児の知を健やかに伸ばしていこうという心遣いを端々に感じさせる。
 「ここは以前、機械工場だったんです」。四月開園の認可外保育施設「森のようちえん・タテノイト」(横瀬町横瀬)を運営する保育士の舘野繁彦さん(41)、春香さん(36)の夫婦はほほ笑む。春香さんの父(69)が、主に自動車用の機械をつくっていたという。
 夫婦の経歴は極めて異色だ。ともに東京工業大大学院で地球内部の構造の研究に打ち込んだ。東工大や岡山大で教壇に立ち、学生たちの指導に当たった経験も。米国の科学誌サイエンスに論文が掲載されるという研究者として輝かしい成果も収めた。それでは、なぜ?
 「長女の誕生がきっかけで」と二人は口をそろえる。以前居住していた横浜市ではなかなか長女を保育園に預けることができず、待機児童の問題に直面。東京電力福島第一原発事故では、拡散した放射性物質が子どもたちの健康や生活を脅かすことを懸念した。
 「幼児期という人生で一番大切な時をどう育てるか。人に任せるのではなく、自分たちがサポートできればと思った」と春香さん。繁彦さんは二〇一八年、春香さんは一九年に、保育士資格を取得した。
 開園に当たって重視したのは、周囲の自然の豊かさだ。アリの行列の行方を追ったり、サワガニの赤ちゃんを観察したりと、おもちゃに頼らない教育に徹する。開園のアナウンスが遅れたこともあり、園児は長女のみだが、科学や自然に興味を持った休校中の小学生らが次々に訪れる。
 「元素の多くをそらんじる小学一年生がいた。地球上の水がどこから来たのか自分の考えを説明してくれたが、第一線の研究者とそれほど変わらなかった」(繁彦さん)。二人は子どもの潜在能力に意を強くする。
 春香さんは「子どもが自分で考え発言できる。そんな子どもたちの姿勢を保育者が認めるようになればいい」と話す。繁彦さんは「他人との比較でなく自分の情熱に忠実な子ども、自己肯定感を持った子どもを育てたい」と意気込む。
     ◇
 舘野さん夫婦は、森のようちえんと併せて「えほんカフェ」を経営している。現在は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため休業中だが、子どもと大人がコーヒーやお茶を飲みながら絵本や専門書に触れられると好評だ。(出来田敬司)
<たての・しげひこ> 川崎市生まれ。東京工業大地球惑星科学専攻博士課程を修了。東工大特任助教や岡山大特任准教授を経て保育士に。博士(理学)。
<たての・はるか> 横瀬町生まれ。東京工業大地球惑星科学専攻博士課程中退。岡山大助手や日本原子力研究開発機構などを経て保育士に。博士(理学)。

窓際に絵本が並ぶ明るい開放的な園舎

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