<あの日から 東日本大震災11年>震災伝える文芸賞終了へ 千葉・旭の市民有志、5回目を最後に 高齢化や資金難原因

2022年3月9日 07時37分

5回目の文芸賞受賞作品集とかわら版最新号をそれぞれ手にする渡辺昌子さん(左)と義美さん=旭市で

 旭市の市民有志が東日本大震災の記憶を語り継ぐため、二〇一六年度から続けてきた「旭いいおか文芸賞」が五回目を最後に終了する見通しとなった。実行委員会メンバーの高齢化や資金難が理由だが、実行委会長で元高校教師の渡辺昌子さん(75)は「私自身が被災の記憶を薄れさせないためにも、ほかの伝承活動は続ける」と前を向く。(堀場達)
 一一年三月十一日の震災で、津波が押し寄せた同市では、飯岡地区を中心に死者十四人、行方不明者二人を出し、県内最大の被災地となった。
 文芸賞は震災を伝承する目的で「海」にまつわる詩やエッセー、短歌などを募ってきた。毎年千を超える個人、団体が応募。作品テーマは津波から楽しい思い出までと幅広く、審査委員長は同地区出身の詩人、高橋順子さんが務めた。
 しかし、実行委員七人のうち、六十代の一人を除いて、七十〜八十代と高齢化。コロナ禍も重なって、作品募集のための学校訪問などを続けることなどが困難に。市の補助金交付も二〇年度が最後となった。実行委の要請を受け、市が「ふるさと文芸賞」を創設することも幕引きを後押しした。
 市の文芸賞は、震災記憶の伝承を理念に掲げていないものの、渡辺さんは「私たちの思いを幾分、くみ上げてくれたかな」と話す。実行委は四月に総会を開き、解散を含めた今後の方針を正式に決める予定だ。
 一方、他の伝承活動は継続する。渡辺さんの夫義美さん(77)が理事長を務め、震災からの復興と街づくり活動に取り組んできたNPO法人「光と風」は、A4判両面刷りの手作り新聞「復興かわら版」を発行し、無料で配布してきた。
 飯岡地区の住民らがイラストで登場し、震災時の様子や復興の経緯などを語る内容で、創刊したのは震災から間もない一一年七月。渡辺さんが取材、編集のリーダーで、最盛期は月一回発行してきた。こちらもメンバーの減少と高齢化で、発行間隔が二〜三カ月に延び、「震災十年の節目でやめようと弱気になったこともある」と渡辺さんは胸の内を明かす。
 それでも、迷いを脱し、継続に踏み切れたのは、かわら版が「被災者に寄り添えてきた」との自負があったから。「出さないでいると、私自身、被災の記憶が薄れてしまう。年に一、二回でもやっていきたい」
 最新の三月一日号は、通算六十五号を数える。震災当時は小学三年生で今年成人式を迎えた女性、米本弥一郎市長ら六人が、津波や揺れの体験などを語っている。

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