<働き方改革の死角>副業・兼業の「労働時間の通算」問題決着 課題は低賃金で不安定な働き手を増やす恐れ

2020年7月4日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大で副業の増加など働き方が大きく変わる中、副業・兼業で焦点だった労働基準法上の労働時間の扱いは、現行通り本業と副業分を合算する方式にすることで決着する。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)が長時間労働の防止を重視した形だが、低賃金で不安定な働き手を増やす恐れもはらむ。深刻な働き手を守る安全網の整備が早急に求められる。(編集委員・久原穏)

 問題をめぐっては、政府の規制改革推進会議が昨年6月に、副業を推進するため合算方式の見直しを提言。労働界は働き過ぎを助長するとして反対していた。政府は労災認定の際は労働時間を合算するため労災補償保険法を改正したが、労基法については規定を見直すか検討を続けてきた。ルールづくりを担う労政審は、八月をめどに策定するガイドラインで、働き手の自己申告に基づき本業と副業の労働時間を合算し、時間外労働の上限規制を超えないように義務づける。
 だが、現状のまま合算方式を採用すると、副業先の労働条件が悪化する可能性がある。副業先での勤務時間は「残業」に当たる時間外労働になりやすい。副業先は割増賃金の支払いを避けるため、価格を抑えて仕事を発注する業務請負などに切り替えかねない。雇用契約ではないので最低賃金の適用も、労働法制での保護もない働き方になる。
 政府は成長戦略として副業を推進してきたが、総務省の調査によると、副業をする人の3分の2は本業の年収が299万円以下。生活のために副業するのに、低賃金で不安定な働き方に陥る懸念がある。
 労働問題に詳しい専修大学の広石忠司教授は「労働時間の管理が不要な業務委託など、人を雇わずに働かせる手法を選ぶ経営者が増えるのではないか。こうした働き手への救済策がなければ、副業推進の政策にも限界がでてくるだろう」と指摘している。

◆働き手を守るために必要なものとは

 副業・兼業の労働時間の管理問題が決着します。新型コロナウイルスを受けた働き方として副業やフリーランスは注目を集めていますが、ルールや安全網に問題点はないのかまとめました。
Q 新型コロナウイルスの感染拡大によって、副業のニーズが高まったようですが。
A 収入減や休業に追い込まれ、生活のために副業を始める人が増えています。パソコンを使った「テレワーク」の普及により、通勤していた時間を自由に使えたり、ネットを通じて仕事を請け負う「クラウドワーク」をしやすくなったのも一因です。
Q なぜ労働時間の合算方式が議論の対象になっていたのでしょうか。
A 労働基準法は法定労働時間を1日8時間、週40時間と定めています。仮に本業と副業の労働時間を合算せず別々に規制を当てはめると、1日の法定労働時間は最大16時間に延び、働き方改革で定めた「時間外労働の上限規制」と矛盾します。副業推進が長時間労働を助長するのは本末転倒です。
Q 合算方式で落ち着いて良かったですね。
A 課題は残ります。法定労働時間を超えた時間外労働(残業)に対して、雇用主は割増賃金(25%以上)を支払わなければなりません。時間外労働が発生しやすいのは、雇用契約を後で結んだ方、すなわち副業先です。だから、副業先の企業は雇用契約を結ばずに仕事を頼む業務請負を増やす懸念があります。実際、企業から単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」が、今年上半期だけで100万人増えたという調査結果もあります。
Q どのような改善策が考えられますか。
A 業務請負でも、指揮や命令をして働かせたら雇用者責任を負わせるべきだという意見があります。また、業務請負には労基法の最低賃金が適用されませんが、下請法などを参考に報酬の下限を設けるべきだとの声も強まっています。

PR情報