迫る泥水「早く2階へ」 千寿園、寝たきり高齢者を必死に搬送 熊本豪雨 

2020年7月6日 00時29分
「早く、早く」。泥水が迫る中、寝たきりや車いすの高齢者が次々と2階へ運び込まれた。熊本県南部を襲った豪雨で、14人が4日に心肺停止状態で見つかった球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」。再び雨が降りだした5日朝、担架を持った警察官が慌ただしく行き交っていた。担架からはブルーシートや毛布がのぞいていた。
 ぬかるんだ道、生い茂る竹やぶを抜けた先にある山中の一角で、警察官らが黙々と担架を運搬車両に乗せる。作業を見守るホームの職員らは静かに手を合わせ、時折、憔悴した様子で肩を落とした。

熊本県球磨村で地面に描かれた「米、水、SOS」の文字=5日午前11時49分

 「濁流がこんなところまで」。4日未明、千寿園で入居者らの避難活動に携わった近所の男性(88)は、一気に浸水が進む状況にあぜんとしたという。男性によると、午前3時ごろにホームに着くと、1階の部屋とその周りに入居者が集められていた。職員と地元の協力者約20人で入居者を2階に運んだが、寝たきりや車いすの人が多く、避難に時間がかかった。
 エレベーターがないので、階段で1人を4、5人がかりで運んだ。目の前の小学校の校庭が完全に浸水し「やばいと思った」。午前5時ごろには水はホームの玄関まで迫り、避難を促され、その場を後にした。「間に合わなかったのかもしれない」。男性は悔しさをにじませた。

球磨川(奥)の氾濫で浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」(中央手前)。ホームの裏手には球磨川の支流「小川」が流れる=5日午前、熊本県球磨村(共同通信社ヘリから)


 避難の手伝いに駆けつけた別の男性は「窓ガラスが割れて一気に水が入ってきた」と振り返り「必死に入居者の腕をつかんだが、助けられなかった」と涙を流した。
 球磨村一帯で甚大な被害が発生し、ライフラインも途絶えた。「電気もガスもつながらずに不安だった」。公民館に避難していた女性(41)は5日午前、幼子を背負い、3人の子どもの手を引きながら、救助ボートで到着。親子5人、別の避難先に身を寄せるという。
    ◇

亡くなった方々

 熊本県南部の豪雨による犠牲者で、県が発表した方は次の通り。
【芦北町】
 酒井民子さん(82)▽川田武人さん(72)▽川田節子さん(69)▽入江たえ子さん(69)▽入江竜一さん(42)▽堀口ツギエさん(93)
【津奈木町】
 丸橋勇さん(85)
【人吉市】
 後村多佳志さん(62)▽西隆男さん(84)▽井上三郎さん(81)▽湯本秀子さん(61)▽平田千恵美さん(57)
(共同)

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