過去の名舞台から最新ミュージカルまで…デジタルアーカイブ化1300本 演劇界を有料配信で支援へ

2021年2月3日 18時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立つ舞台芸術界を支援するため、劇団などが持つ舞台公演映像を収集してデジタルアーカイブを構築するプロジェクトが進んでいる。これまでに過去の名舞台から最新のミュージカルまで、約1300本が集まった。コロナ禍を逆手に取り、未整理で埋もれた作品を発掘して有料配信につなげ、日本の舞台芸術の発信を目指す。(服部聡子)

1961年に上演された『女の一生』の一場面、北村和夫(左)と杉村春子=文学座提供

 プロジェクトは、文化庁が昨年8月に採択した「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業」(EPAD)の一環。提案した倉庫会社「寺田倉庫」(東京都品川区)が、松竹、東宝、劇団四季、東京芸術劇場など200以上の団体が参加する「緊急事態舞台芸術ネットワーク」(豊島区)と取り組む。
 EPADへの映像提供や配信などに協力すれば、公演主催者や権利者らに対価が支払われる仕組みとなっている。
 舞台映像は、業界団体などを介して演劇、舞踊、伝統芸能の3部門別で募った。杉村春子さん主演の文学座「女の一生」などの往年の名作から2・5次元ミュージカルの超人気作「刀剣乱舞」、沖縄の歌舞劇「組踊くみおどり」など多種多様なラインアップがそろった。

1980年に上演された『ブンナよ、木からおりてこい』の一場面=青年座提供

 映像の大半は早稲田大学演劇博物館(演博)の館内で視聴できる予定。2月下旬に演博は、日英2カ国語で横断検索できる特設サイト「Japan Digital Theatre Archives 2020」での公開を計画している。
 コロナ禍以前から、貴重な舞台映像の劣化と散逸を防ぐため、アーカイブ事業の必要性が指摘されてきた。「われわれ舞台芸術界の積年の夢」。同ネットワーク代表世話人の野田秀樹・東京芸術劇場芸術監督は話す。
 演博が2014、15年度に実施した調査では、回答した全国307の劇団・劇場などのうち8割が舞台記録映像を所持していたが、「未整理の状態」が4割を占めた。映像が残されているメディアの3割がVHSビデオで、長期保存のためのデジタル化も3割しか実施されておらず、撮りっぱなしで死蔵されているケースが多かった。

2012年上演の「カミサマの恋」。手前が主演の奈良岡朋子=劇団民芸提供

 日本では生の舞台を重視する考えが根強く、使用楽曲などの権利を巡る手続きが煩雑なことから、欧米に比べインターネット配信の普及が遅れてきた。コロナ禍の中、舞台映像をオンライン配信で有効活用しようという動きが加速。観客制限による減収分を補うため、実演と配信を併用する新様式の興行に活路を見いだそうとしている。
 EPADでも、収集した舞台映像のうち約200本については、映像を所有するそれぞれの団体が有料配信できるよう、著作権専門弁護士を含むEPAD内のチームがサポートする。
 演博の岡室美奈子館長は「EPADで集められた多種多様な舞台映像は、日本演劇の壮大な見取り図を見ているような気がする」と意義を強調。特設サイトの開設により「舞台資料が一般の演劇ファンにも身近なものとなれば、演劇文化の裾野が広がり、コロナ禍で苦しむ演劇界を活性化することにも貢献できるのでは」と話した。

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