ふるさと納税 赤字拡大 県など昨年度288億円

2019年8月28日 02時00分
 好きな自治体に寄付すると住民税などが軽減されるふるさと納税で、県と県内33市町村が2018年度に受け入れた寄付額は53億円だった一方、県民が他の自治体に寄付したことによる「流出額」は341億に上ったことが、総務省の調査で分かった。受け入れ額から流出額を引くと288億円の“赤字”だった。赤字は年々拡大しており、県民の税金の県外への流出は深刻な状況にある。 (志村彰太、西岡聖雄、吉岡潤、曽田晋太郎、大平樹)
 同省が毎年公表している「ふるさと納税に関する現況調査」は、前年度の寄付額と流出に当たる「住民税控除額」をまとめている。本紙は、寄付可能額が増額されるなど、ふるさと納税の獲得競争が激化した一五年度から一八年度の県内分の寄付額などを集計した。
 一五年度に十九億円だった県内の自治体への寄付額は年々少しずつ増えていたが、同省が一部の自治体による「過度な返礼品」を問題視し、返礼品の抑制を通知した一八年度は減少に転じた。一方、一五年度に百三億円だった流出額は増え続け、四年間で三倍以上に膨れ上がった。一八年度は全自治体で流出額が前年より増えた。
 一八年度の寄付額を自治体ごとに見ると、山北町が五億二千万円で最多だった。厚木市の四億九千万円、箱根町の四億七千万円、鎌倉市の四億二千万円、小田原市の三億四千万円などと続き、県央や県西地区で好調な自治体が目立った。寄付額の多い自治体の多くは「収支」も黒字だったが、返礼品の確保や、ふるさと納税サイトへの掲載にかかる経費が「寄付額の半分くらいかかり、厳しい」(厚木市財政課)という。
 前年度からの変動を見ると、PRに力を入れた厚木市は二億九千万円、返礼品が人気の鎌倉市は一億六千万円増えた。一方、期間限定で取り入れていた旅行券がなくなった寒川町は十四億七千万円、デジタルカメラを返礼品から外した綾瀬市は二億四千万円、ワインやシャンパンなど人気の返礼品をやめた小田原市は四億二千万円減った。
 一方、人口の多い都市部は流出額が深刻になっている。最も多かったのは、横浜市の百三十六億七千万円。県の八十五億円、川崎市の五十六億四千万円、相模原市の十三億五千万円、藤沢市の九億九千万円と続いた。流出額が多いほど翌年度の予算への悪影響も大きいが、県財政課は「流出は止められそうになく、厳しい予算編成に拍車をかけている」と有効な対策を見いだせないでいる。

◆制度のいびつさ 無視できぬ影響

<解説> ふるさと納税による県内の税財源の流出が加速している。厚木市や山北町などはうまく寄付を集めているが、人口が多い自治体を中心に桁違いの金額が流出し続け、県全体では財政への悪影響は無視できなくなっている。
 昨年度の県全体の流出額三百四十一億円のうち八割以上を県と横浜、川崎、相模原の各政令市が占めた。都市から地方への財源移転のため始まった制度でやむを得ない面はあるが、流出した住民税は住んでいる自治体から受ける公的サービスの対価の意味がある。ある自治体の担当者は「住んでいない自治体に住民税相当分を支払う考え方は、税の基本理論からすると筋が悪い」と制度の根幹にある「いびつさ」を指摘する。
 財政力が弱く国から地方交付税を受け取る自治体は流出による減収の75%が翌年度の交付税で穴埋めされる。ところが、川崎市のように交付税を受け取っていない「不交付団体」は流出しただけ税収が減る。
 総務省は「返礼品は寄付額の三割以内」とのルールを守らない自治体にペナルティーを設けたが、都市部はそもそも知名度の高い特産品が少ないのが悩み。「通販サイト化」とも批判される実態も改善されていない。いびつな仕組みを放置したままで財源流出は止まらない。抜本的見直しが必要だろう。 (志村彰太)

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