<社説>学術会議改革 任命拒否撤回が先決だ

2021年4月24日 08時14分
 日本学術会議が、菅義偉首相が任命拒否した会員候補六人を「即時に任命するよう要求する」声明を発表した。任命拒否は法の趣旨を逸脱する。会議の在り方を見直すとしても拒否の撤回が先決だ。
 日本学術会議は日本の科学者を代表する機関で、独立して職務を行うと日本学術会議法で定められている。会員は同会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定められ、首相の任命について政府は一九八三年、当時の中曽根康弘首相が「形式的にすぎない」と答弁するなど、首相の裁量を認めてこなかった。
 しかし菅首相は昨年九月の就任直後、会員候補のうち六人の任命を拒否し、その理由について「総合的、俯瞰(ふかん)的な観点から」としか説明していない。
 政府は、学術会議の「推薦通りに任命しなければならないわけではない」とする内部文書を二〇一八年に作成して、こうした法解釈は一九八三年から「一貫した考え方」だ、とも主張する。
 ただ、この内部文書が過去に国会で説明され、審議された形跡はない。国会審議を経て成立した法律の解釈を、政府部内の一片の文書で変更することは到底許されない。菅内閣の説明は詭弁(きべん)だ。
 会議側は再三、六人の任命と詳しい理由の説明を求めてきたものの、菅内閣側は応じず、初めての総会の声明という形となった。
 加藤勝信官房長官は記者会見で「任命権者の菅首相が最終判断した」と任命拒否の考えを重ねて示したが、声明は「強い調子でわれわれの思いを発出した」(梶田隆章会長)ものだ。政府は声明の趣旨を重く受け止めるべきである。
 学術会議の総会は、組織の在り方に関する報告書もまとめた。学術会議が、国を代表する学術団体としての役割を果たすには、国の特別の機関である現行の組織形態を変更する積極的理由を見いだすことは困難だとしつつ、引き続き検討する、としている。
 そもそも組織見直しは菅内閣が求めたものだ。任命拒否を巡り対立する学術会議をけん制し、政府の政策に批判的な学者に圧力をかける意図があるのだろう。
 学術会議の組織は、時代の変化に応じて見直す必要があるとしても、それによって任命拒否が正当化されることはあり得ない。
 学術会議の在り方は、学問の自由と政治からの独立を担保するため、落ち着いた政治状況の下で論じる必要がある。首相の任命拒否撤回は、その第一歩である。

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