<くるみのおうち>(5)「さくらの会」誕生 必ず何とかするから

2021年4月25日 07時14分

体育館に月1回集まり、運動やゲームなどで交流した「さくらの会」の活動=川崎市で(太田修嗣さん提供)

 どうも息子の様子がおかしい−。そう感じたのは、小学三年の夏休み明け以降でした。苦しい胸の内を訴えるように、痛々しい絵を描くことが多くなっていました。
 心配になって、学校の連絡帳に書いてみました。先生から「新しく入ってきた児童との接し方を直樹君が勉強中です」と返ってきましたが、当時の私にはよく理解できませんでした。
 息子の所属していた特別支援学級の転入生は、元気が有り余っていたり、ほかの人への接し方が一方的すぎたりして、息子がとても苦手なタイプ。つまり互いに支援を要する部分が原因で、日常的にトラブルが起きていたのです。
 授業参観に訪れて、息子がどういうつらさの中で学校生活を送っているかを目の当たりにしました。その帰り道、「父さんが必ず何とかするから」と息子に言うと、小さく「うん」と返事がありました。
 私は、先生たちと話し合いを重ねました。「手のかかる子を預かっているのだから、多少のトラブルはやむを得ない」と言わんばかりの姿勢に半ばあきれながらも、息子が感じていたであろう苦しさを涙ながらに訴え、理解を求めました。
 一方で、親ができることは何だろうと自問しました。もっとお互いを理解し合うために、親子ともに交流できる場がほしいと思うようになりました。父子家庭だからか、それまで積極的に声をかけてくれる方は少なかったのです。
 思い切って相談してみると、ほかの保護者も同じ意見でした。特別支援学級の呼称が「さくら級」だったことから、直樹が四年生になった二〇一〇年、「さくらの会」と名付けて活動を開始。十家族ほどが集まって月一回、運動やゲームなど親子で一緒に楽しく交流しました。
 「一人で悩まず相談できる場ができた」「みなさんも同じようなことで悩んでいると分かった」。参加者の言葉に手応えを感じるとともに、親子での交流をきっかけにお互いの理解が進みました。先生たちのご尽力のかいもあって、学校におけるトラブルが目に見えて減っていきました。
 トラブルの原因はただ排除すればよいのではなく、関係する人たちが一緒に考え、自分たちでできることをするのが大事なのだ、と身をもって学びました。 (太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◇次回は五月二日に掲載予定
 ◇ご意見・ご感想は、川崎支局(電子メールkawasaki@tokyo-np.co.jp)へ。

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