【独自】マイナンバー事業の業者選定8割が競争なし 随意契約を乱発する機構

2021年4月27日 06時00分
 総務省所管でマイナンバー事業の中核を担う「地方公共団体情報システム機構(J―LIS)」が民間企業などに発注したマイナンバー関連事業の74%が、競争を経ずに受注先を選ぶ随意契約(随契)だったことが本紙の集計で分かった。国発注のデジタル事業全体と比べても随契の多さは際立っている。競争入札に一事業者しか参加しない一者入札を含めると、全体の81%の業者選定で競争が働いていなかった。 (デジタル政策取材班)

◆契約金額も高騰

 国の事業は会計法で競争入札が原則で、機構にも同様の規定がある。機構には巨額の税金が投じられており、閉鎖的な業者選定の妥当性が問われそうだ。
 機構が本紙に開示した資料によると、機構のマイナンバー関連事業は2014~20年度上半期までで、207件、当初の契約額で総額1300億円を超える。このうち随契は74%の154件で、契約額は計約616億円に上った。随契の受注先はNTTコミュニケーションズやNECなどの大手企業が中心だ。
 一者入札は15件で契約額は計約404億円。随契分と合わせると、契約金額ベースでも73%に上った。
 競争が働いていないと契約金額も高くなりがちで、予定価格に対する落札額の割合を示す落札率は、随契が平均92%、一者入札が75%になった。二者以上の競争入札は60%だった。
 一方、2019年度の国発注のデジタル事業では随契は38%にすぎず、一者入札を合わせた割合は76%だった。

◆マイナンバーに8800億円投入

 マイナンバー制度は、国内の住民にそれぞれ固有の番号を割り振り、税や社会保障などの個人情報をひも付けする仕組み。13年にマイナンバー法が成立、16年にマイナンバーカードの交付が始まった。過去9年で国費支出は累計約8800億円に上る。
 菅政権は今国会でデジタル庁創設を柱とするデジタル改革関連法案の成立を目指す。マイナンバーカードの普及拡大のため法案では国が機構の関与を強めることも定めている。

地方公共団体情報システム機構(J―LIS) 住民基本台帳ネットワークを運用していた総務省の外郭団体などを改編し、地方自治体が共同で運営する法人として2014年4月に設立された。マイナンバーカードの発行や関連システムの運用などマイナンバー事業に関わる実務を国や自治体に代わって担う。事業費の多くは国や自治体からの公金で賄われている。カード発行の場合、市区町村が機構に必要枚数の製造を委任し、その費用は総務省から交付金という形で市区町村を経由して機構に支払われる。

◆民間に頼らざるを得ない構造

 随意契約や一者入札の多さは、J―LIS発注のマイナンバー事業が民間企業に依存している実態を映している。これは菅政権の看板のデジタル政策全般にも共通する構造的な課題だ。
 行政側にデジタル人材が乏しいため、政策の遂行には民間の力に頼らざるを得ない。加えて、巨大事業ほど受注能力で大企業に限られ、特定の企業におんぶに抱っこになりやすい。受注競争が起きなければ契約金額が高止まりして税金の無駄につながりかねない上、一部の企業への接近は官民のなれ合いを生みやすい。
 過度な民間依存は事業の質に影響する恐れもある。新型コロナウイルス対策のアプリ「COCOA」で相次いだ不具合では、事業者任せで国がプロジェクトを管理できていなかったことが原因の一つと指摘された。平井卓也デジタル改革担当相も「発注者(国)の能力が低いことがいちばんの問題だ」と認める。
 1990年代以降、業者選定における競争性の乏しさは会計検査院などから何度も指摘されてきたが、政府は改善できていない。コロナ禍、菅政権がマイナンバーを含め行政のデジタル化を急ぐ中で、民間依存からの脱却は急務といえる。

◆随意契約は例外

J―LISの西川仁管理部担当部長の話 機構でも競争入札が原則で随意契約は例外。随意契約の割合が高いままでいいとは思っていない。なるべく案件を切り分けて発注することで企業の参入を促すなど、競争性が発揮されるような発注に取り組んでいく。
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