「変異株は怖い…その場の人たちにあっという間に」 クラスター発生のスナック経営者が猛威語る 茨城・日立市

2021年4月26日 20時44分

非接触型で使える体温計や消毒液なども設置していたスナック=いずれも茨城県日立市で

 新型コロナウイルスの変異株が国内で猛威を振るう中、茨城県日立市のスナックで変異株のクラスター(感染者集団)が発生した。変異株は英国株とみられ、感染者は客と従業員で21人に上る。スナックの経営者の男性(52)は、十分に感染対策をしていたと説明するが、「変異株は怖い。その場にいた人にあっという間に広がった」と振り返る。 (保坂千裕)

新型コロナウイルスの変異株 ウイルスは人の細胞に入り込み、遺伝物質のRNAをコピーさせて増殖する際、一定の割合でコピーミスを起こす。このミスによる変化で変異株が生まれる。国立感染症研究所などによると、英国、南アフリカ、ブラジル由来の3種類は従来株の1.3~1.7倍の感染力がある可能性がある。

◆感染25人中21人

 クラスターが発生したのはスナック「レイ」。男性によると、発端は3月末、同僚同士で訪れた会社員のグループ客だった。4月1日、保健所から、その客のうち2人が変異株に感染していたと連絡があり、系列店を含む全40人を検査。従業員8人の感染が分かり次々に熱などの症状が出た。
 同県の調べでは、店の関連で感染が判明した25人のうち21人が変異株だった。

◆マスクにフェースシールド、徹底消毒も効果なく

 店の感染対策は十分なはずだった。接客をする女性従業員はマスクの上にフェースシールドをし、飲み物は、ストローをマスクの下から入れて飲んでいた。客にもマスク着用を呼び掛け、全てのテーブルの中央にはパーテーションを設置。手指はもちろん、床や壁まで消毒していた。
 県独自の接触通知システム「いばらきアマビエちゃん」に店を登録、県が示す対策にも取り組んだ。
 それでも、変異株は感染を広げた。店ではカラオケを設置しており、男性は「カラオケはおっかない」と懸念する。マイクは複数あり、1曲歌うごとに消毒し、回して使っていた。

◆接触の可能性は極めて低く

 男性は「従業員が客から感染した可能性があるとすれば、飲み物を置くのに、客が外した卓上のマスクを動かすために直接手で触ったことくらいしか想像できない」と明かす。マスクを外す客に着用を強制はできなかったという。

感染を広げた可能性がある店内のカラオケ

 県は、利用客が特定できないことなどを理由に店名を公表した。男性は県の担当者に「店が悪いように伝えないでほしい」と付け加えて公表を了承したが、インターネットには心無い言葉が書き込まれ、従業員が傷つくこともあった。
 3週間前に感染が分かった従業員の中には、退院の基準を満たしても、まだ症状が残る人もいる。男性は毎朝晩、感染した従業員に連絡をしているが、「胸が苦しい」「体の節々が痛い」と訴えられ、不安で眠れない日々が続く。

◆人気店襲った悲劇…閉店へ

 店はJR常磐線大甕駅前にあり、付近の会社員でにぎわう歓楽街の一角に構える。良い時で年間7000万円超の売り上げを誇る人気店だった。男性は評判を取り戻すのは困難だと判断、店を畳むことを決めた。
 「うちだけが悪いわけではないのに。思い入れのある店だったが、従業員もお客さんも、もう戻って来たくはないだろうから」。男性は、寂しそうにそうつぶやいた。

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