「競争意識は強く」との回答とはかけ離れた実態…マイナンバー事業の閉鎖性

2021年4月27日 06時00分
 巨額の税金が投入されているマイナンバーの中核事業で、入札にかけず特定企業に発注する随意契約が続発している。事業を発注する地方公共団体情報システム機構(JーLIS)に対し、契約状況を監視する有識者も閉鎖的な業者選定に苦言。それでも改善の兆しはうかがえない。 (デジタル政策取材班)

◆「囲い込み」がデジタル事業で横行

 「競争入札という意識は強く持っている」「既存業者でずっとやるのは避けたい」。機構の担当者は本紙の取材に、何度も競争の必要性を口にしていた。
 ところが実態は大きく異なる。機構から開示された契約一覧をたどっていくと、「随契は例外」とは名ばかりな状況が浮かぶ。例えば、マイナンバーカードに機能を追加するシステムの事例。機構は2015年度、システムの設計を随契でNTTコミュニケーションズなど4社に発注。翌年度以降も、システム運用や保守など5件に及ぶ一連の業務を巡り随契で同社に受注させていた。
 開発や設計など新規業務を受注した業者がその後の関連する契約も独占する状況は「ベンダー・ロックイン(特定業者による囲い込み)」と呼ばれ、デジタル分野では長年の課題になっている。受注競争を阻害し、特定企業に依存しがちになるためだ。会計検査院は他の業者による途中参入が進むよう、業者間での引き継ぎなど各省庁に発注の工夫を求めてきた。
 機構の発注で見逃せないのは、機構自らがベンダー・ロックインを作り出している点だ。随契全体のうち「他の業者なら業務に著しい支障が生ずる恐れがある」を理由としたケースは7割以上。カードの機能追加で、NTTコミュニケーションズを入札なしに指名したのは同様の理由だった。
 随契を乱発する機構には内部から注文も出ている。18年、契約をチェックする内部の専門家会議が「随意契約の場合、恣意的な判断がされて契約の公正さが損なわれることがあってはならない」などと指摘した。専門家の意見を受け、機構は「随契を減らすため、新規の開発業務では競争入札を行うようにしている」とするが、その後も状況は変わっていない。開発業務でも随契の事例は散見される。

◆特定業者だけだと「トラブル時に重大な影響」

 随契が減らない理由について、機構の西川仁管理部担当部長は「開発業者以外だとトラブルが起こったときに重大な影響を及ぼしかねない」と説明。別の機構関係者は「われわれのシステムは事故を起こしてはいけないものだ」と話す。
 入札制度に詳しい上智大学の楠茂樹教授は「公共契約において業者の選択の余地が小さい状態は効率的な支出の観点から望ましくなく、改善の努力は常に必要である」と指摘している。
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