協力金1日2万円「香典のつもりか」 政府や都の営業制限、どこまで許される? <新型コロナ>

2021年4月27日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、3度目となる緊急事態宣言が東京都と関西3府県を対象に発令された。今回は酒類を提供する店や百貨店に休業を求めるなど、2度目の宣言時にはなかった要請も含まれている。新規感染者増に歯止めをかけるためとはいえ、経済への打撃は甚大。支援も十分でない中、営業行為の制限はどこまで許されるのだろうか。(木原育子、榊原崇仁)=2021年4月27日東京新聞特報面に掲載=

午後8時を過ぎ、デパートなどの明かりが消えた新宿通り=25日、東京都新宿区で

◆「本来の銀座じゃない」

「ノンアルビールがばか売れで、品切れの日もある。本来の銀座じゃないですよ」
 緊急事態宣言2日目の26日、東京・銀座のクラブやバーが入るビルの間の路地から出てきた台車に載っていたのはビールやワイン、シャンパンに加えて大量のノンアルコールビール。台車を引いていた酒店の男性(41)は酒があまり売れないと苦笑いしつつ、「つぶれた飲食店もあって、売り上げは減っている」と明かした。
 休業要請に従って、銀座のクラブやバーの多くが店を閉めるとみられる。料理を楽しめる店ならまだしも、酒が中心の業態ではどうしようもないからだ。この日は月曜日とあって、休み前の金曜日に飲まれた酒の空き瓶を回収する人もいた。別の酒店の男性(32)は「いつもより瓶が多い。宣言前の駆け込み需要があったんでしょう」と話した。
 飲食店が休みになると、関連する業者にも打撃を与える。酒店だけでなく生花店も同様。週の初めに新しい花を飾り付けるのを習慣にしているクラブも多いのに、宣言中はそれが期待できない。銀座で30年以上続く生花店の女性経営者は「協力金も私たちにはわずか」と涙ぐんだ。売り上げはコロナ前の半分以下という。

◆飲食店の取引業者「不公平」

 店につまみ類を卸している「銀座チャーム」は、賞味期限が短いあられやチーズの扱いをやめ、1年ほど持つチョコレートだけにした。同社は6人いた従業員には全員辞めてもらったと言い、代表の森透さん(59)は「昨年からの傷が治りきらないうちにまた宣言。傷口は広がるばかりだ」と肩を落とした。
 1日4万~20万円の協力金が出る飲食店と違って、取引先に支給される額は圧倒的に少ない。店の出入り口に置くマットをレンタルサービスしている会社の男性社長(61)は「こんな不公平で、中途半端なやり方はない」と憤った。
 クラブで働く女性らを支援している一般社団法人「日本水商売協会」の甲賀香織代表理事は「都は見回りの強化などではなく、どうやったら感染拡大を防ぎながら私たちが生き残れるのかを一緒に考えてほしい」と求めた。
 飲食店が営業するかどうかは、食材の生産者にも影響する。日本政策金融公庫が1月、取引のある全国の農業者を対象に実施した調査で、回答者の64.6%が「売上高にマイナスの影響がある」と答えた。
 石川県小松市の農業宮本健一さん(33)は戦々恐々としている。「飲食店への休業要請が決まり、コメが予定よりさばけていないと聞く。在庫が余っている分、秋の出荷時に値段が下がり、大きな打撃を受ける恐れがある」

◆営業継続のミニシアター「文化と芸術が廃れかねない」

 緊急事態宣言はエンターテインメント業界も対象。大手映画館がこぞって休業要請に応じた一方、日が当たりにくい佳作を上映しているミニシアター「ユーロスペース」(東京都渋谷区)は営業を続ける。「発表の場や観賞の機会が失われ、文化と芸術が廃れかねない」(北條誠人支配人)のが休館しない理由だ。
 同館のように広さ1000平方メートル以下の施設は「休業の協力依頼」となり、従わなくても罰則対象にはならない。このため、できる限りの感染対策をし、上映を継続する道を選択した。客席を半分に減らして間隔を空けるほか、舞台あいさつとトークショーは取りやめる。
 映画館では皆スクリーンを向き、黙って観賞する。北條さんはそれで感染するのかと感じつつ、1日2万円という協力金の額にも疑問を抱く。「少ない。息が絶えそうな文化芸術活動への香典のつもりか」と皮肉る。近くにある映画館「アップリンク渋谷」は売り上げの激減から5月20日での閉館を発表しており、「香典」も冗談に聞こえない。

これまで通り営業を続ける浅草演芸ホール=26日、東京都台東区で

 浅草演芸ホールなど都内の寄席も営業継続を選択した。都は「無観客での開催」を求めていた。落語家の立川談四楼さんは「寄席に客を入れちゃいけないっていう理由がよく分からない。根拠があるなら示してほしい。政府の迷走ぶりにうんざりしているのは私だけじゃない。国民がノーを突き付けたのが25日の国政選挙の結果。政府にとっちゃ今がまさに緊急事態でしょ。目を覚まさなくちゃ」と話す。

◆百貨店「感染事例ない」表明むなしく…

 要請に応じて各店とも一部売り場を除いて休業している百貨店業界も困惑する。日本百貨店協会は15日付で大阪府に、20日付で都に「営業継続のお願い」という要望書を出した。文書では「感染対策を高レベルに維持しており、店内での感染事例もない」と強調。百貨店は規模が大きいだけに、取引先やテナントにも影響が及ぶ現実を顧みるよう訴えた。
 切実な願いの裏には厳しい経営状況がある。協会によれば、全国に約200ある百貨店の昨年の売り上げはコロナ禍の影響で前年比25.7%減。金額にして1兆5000億円のマイナスとなった。
 休業の協力金は1日20万円。協会の資料に基づいて単純計算すると、都内の店は1日平均およそ1億5000万円の売り上げがあるにもかかわらずだ。協会の担当者に協力金の額について聞くと「頂けるのはありがたいですけど…」と答えるにとどまった。
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