<社説>線状降水帯 冷静な対処こそ肝要だ

2021年4月27日 08時29分
 気象庁は今年の梅雨期から、熊本豪雨のような局地的な大雨を降らせる「線状降水帯」の発生、警戒を呼び掛ける情報を出す。危機意識の共有が狙いだが、既存の警戒情報との混同も懸念される。
 線状降水帯は、暖かく湿った空気が大量に流れ込んで発生した積乱雲の集合体で、長時間、同じ場所に大雨を降らせる。二〇〇〇年の東海豪雨をはじめ各地で甚大な被害をもたらし、一四年の広島豪雨以降、広く知られるようになった。河川の氾濫などにより、一八年の西日本豪雨では三百人近くが、二〇年の熊本豪雨では六十人以上が犠牲になっている。
 気象庁は今月中旬、気象レーダーによる解析などに基づき、線状降水帯の発生と、その危険性を告知すると決めた。
 気象庁は、極めて重大な自然災害が想定される場合、大雨や暴風などの特別警報を発令している。これとは別に、一時間あたり一〇〇ミリ前後の猛烈な雨には「記録的短時間大雨情報」も出す。過去の教訓に基づいた対応とはいえ、さらに線状降水帯情報も加わることにより、自治体や住民の混乱も危惧される。すべての警戒情報が有効に機能するよう整理することも今後の課題といえよう。
 気象庁の情報などを基に、市町村は「緊急安全確保」や「避難指示」を発令する。政府は今国会で法改正し、分かりにくいと指摘があった「避難勧告」と「避難指示」を、同じく今年の梅雨時から「避難指示」に一本化する。線状降水帯情報の取り扱いを含め、市町村によっては条例や防災計画の迅速な修正などが求められる。
 線状降水帯の見極めは難しい。洋上の水蒸気量などからスーパーコンピューターで解析するが、台風に比べて積乱雲は小さく、寿命も短い。気象庁自身、現時点での「精度の低さ」を認める。今後、半日前には危険性を伝える予測精度を目指すという。
 線状降水帯情報が出れば、危険度が高まっていることは間違いないが、だからといって即避難行動に移るのはかえって危険なこともある。逆に発令されていないからといって安全と限らない。
 やはり基本に忠実でありたい。市町村からの「高齢者等避難」や「避難指示」に注意すること、さらに土砂災害や浸水害、洪水害の発生リスクを「見える化」している気象庁の「危険度分布(キキクル)」や、国土交通省などが出す河川の水位情報を活用し、冷静な情報収集に努めてほしい。

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