1台50万円も…中国の電気自動車に「価格破壊」の波 慎重な日本勢にも変化

2021年4月28日 06時00分
 中国で電気自動車(EV)の価格破壊が起きている。昨年発売された1台2万8800元(約48万円)の国産モデルが人気で、4月中旬に始まった上海モーターショーにも割安なEVが多数出展されている。世界的な「脱炭素」の流れでEVの注目度がアップ。ハイブリッド車(HV)が中心で早急なEV化に慎重だった日本勢にも、変化の芽が出てきている。(経済部・岸本拓也、上海・白山泉)

◆テスラ超え「世界一」

五菱汽車が上海モーターショーでお披露目した新型小型EV「宏光ミニマカロン」=白山泉撮影

 「実際に見ると意外に安心感がある。この価格なら買える!」。上海モーターショーの会場で会社員の女性(27)は目を輝かせた。視線の先には、格安EVで知られる上汽通用五菱汽車の新型小型EV「宏光ミニ マカロン」があった。
 大きさは日本の軽自動車ほど。4人乗りで最安約62万円だ。価格を抑えた分、1回の充電で走れる距離は120キロメートルと短いが、販売担当者は「一般の人の活動範囲を研究して設計した」と話す。昨年7月に発売した最安で50万円を切るモデルは、中国の地方都市を中心に20万台以上が売れ、今年1月の月間EV販売台数で米テスラを超えて「世界一」となった。
 中国EV大手BYDの担当者は「約100万円の小型EVが若い女性に人気だ」と強調する。広州汽車グループは大型モニターを搭載し、映画やスマホのアプリを楽しめる小型EVを披露。1回の充電で500キロメートル走れ、同等の走行距離を持つ日本メーカーのEVの半値ほどの約225万円に抑えた。

広州汽車が発表した小型EVはさまざまな機能を兼ね備えたタッチパネルを採用した=白山泉撮影

◆脱炭素が追い風に

 中国は手厚い補助金を出すなど、国策でEVを推進してきた。昨年の中国の新車販売は、新型コロナウイルスの影響で前年比1・9%減の2531万台だったが、EVなど「新エネルギー車」は10・9%増の136万台に上った。
 さらに追い風となりそうなのが世界的な脱炭素の流れだ。欧米諸国や日本は、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げた。
 走行中にCO2を排出しないEVは脱炭素の有効策として注目が集まる。価格の高さや短い航続距離などが課題だが、中国の格安EVはその壁に風穴を開ける可能性を秘める。EVメーカー幹部は「『中国のトヨタ自動車』を目指し、世界に飛び立つ」と意気込む。

◆日本はHVにこだわるが…

 欧米メーカーでは、米ゼネラル・モーターズ(GM)が35年までにガソリン車の全廃を決めるなど、EVシフトが加速している。
 一方、日本勢の多くは、エンジンとモーターを組み合わせたHVが脱炭素の「当面の現実解」(トヨタ幹部)とみる。EVも製造過程ではCO2を排出し、発電を化石燃料に依存する日本などでは「EVもHVも総排出量は同程度」との試算もある。トヨタの豊田章男社長は「脱炭素の道のりは(EVだけの)一本道ではない」と話す。

2040年に「ガソリン車ゼロ」の目標を表明したホンダの三部敏宏社長=23日午後、東京都港区で

 しかし急速な脱炭素の流れを受け、ホンダは得意のHVに見切りをつけ、40年に新車販売すべてをEVと、水素で走る燃料電池車(FCV)にする目標を掲げた。三部敏弘社長は「ハードルは非常に高いが、脱炭素は自動車メーカーの責務だ」と強調し、経営資源を環境技術の開発などに集中させる方針を示した。

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