<社説>EU太平洋戦略 地域の緊張高めぬよう

2021年4月28日 07時49分
 欧州連合(EU)や加盟国がインド太平洋戦略を策定し、日本などとの安全保障協力への積極姿勢に転じた。台頭する中国けん制の意味合いもある。新戦略が地域の緊張を高めぬよう注視したい。
 EUは今月、オンラインでの外相会合でインド太平洋戦略に合意した。アフリカ東海岸から太平洋島しょ国までの地域を対象に、安定や航路の自由を確保し、民主主義、人権、法の支配の順守を堅持するとしている。
 中国を名指しこそしていないものの、「海洋安全保障、悪質なサイバー活動、組織犯罪」などへの対応を含む安保、防衛での連携を進めるとしている。
 戦略について、二十七日会見したフロア駐日EU大使は「安保と防衛面でこの地域への関与を強めたい。日本と力を合わせて戦略を実施したい」と述べた。
 十三日には、EU中軸国のドイツが日本との間で初めての外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を開催した。ドイツ政府が昨年九月に策定したインド太平洋指針に基づくもので、安保協力を進めていくことで合意した。
 同様のインド太平洋戦略や指針は、フランスやオランダも策定している。EUや加盟国がこの地域を重視する姿勢を打ち出している背景には、軍事大国化し人権侵害が目立つ中国への警戒感がある。
 EUは中国との経済関係を重視してきたが、少数民族ウイグル族に対する弾圧を理由に三月、中国当局者らにEU渡航禁止と資産凍結の制裁を科した。欧州の中国への制裁発動は三十二年前の天安門事件以来。対中政策の大きな転換となった。
 EUは、今回の戦略は「人権、民主主義、法の支配」などが土台だとし、同じ価値観を共有するとして日本を重視している。
 アジアの人権問題改善や、多国間主義推進のため、日本と欧州が協調する意味はある。
 ただ、危うさもある。
 ドイツ海軍はフリゲート艦を太平洋地域に派遣する予定で、自衛隊との共同訓練も検討されているという。EUを離脱した英国も、この地域を「世界の成長の原動力」と位置付け、空母を派遣する方針だ。こうした欧州の動きが中国などの反発を招き、逆に地域の緊張を高めることにはならないか。
 EUは九月までに戦略の詳細をまとめる。狙いや内容を見極め、軍事的に前のめりにならないよう、協力の道を模索したい。

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