3年ぶり参院憲法審査会、緊急事態条項を巡り論戦 「コロナ便乗」立民・共産など批判

2021年4月28日 22時18分
 参院憲法審査会は28日、約3年2カ月ぶりとなる実質的な審議を行った。自民党と日本維新の会は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、大規模災害時などに国会議員の任期延長や内閣の権限強化を可能にする緊急事態条項を新設する改憲についての議論を求めた。立憲民主、共産両党などは「緊急事態宣言下の現状を利用した主張だ」と反対した。

多くの人が傍聴に訪れた参院憲法審査会=28日午前

 自民の石井正弘氏は、緊急事態条項の創設を盛り込んだ4項目の党改憲案を踏まえ「コロナ禍や今後発生し得る未知の感染症など緊急事態への対応は、憲法に新たな問題を提起している」と述べ、条項に関する議論を呼び掛けた。維新の松沢成文氏も「喫緊の課題として緊急事態での人権制約のあり方を議論する必要がある」と同調した。
 これに対し、立民の打越さく良氏は条項の創設について「為政者は緊急時と称して権限を最大に振り回す恐れがあり、国民の権利や自由が脅威にさらされる」と懸念を示した。共産の山添拓氏は「コロナ危機に便乗して改憲論議をあおるのは、究極の火事場泥棒だ」と断じた。
 社民党の福島瑞穂氏は、コロナ禍で憲法が保障する生存権を脅かされる生活困窮者が多いと説明。「すさまじい状況で国民は誰も改憲を望んでいない」と強調した。(山口哲人)

今国会で初めて開かれた参院憲法審査会=28日午前

◆参院憲法審査会要旨

 28日の参院憲法審査会であった各会派の意見表明の要旨は次の通り。
 石井正弘氏(自民) 施行後74年が経過する日本国憲法の下で、今日の自由で民主的な社会を築いてきた。しかし、内外の社会環境や価値観が大きく変化する中、1度も改正を経ていない現行憲法には内容的に現代社会にそぐわない部分が生じていることも事実ではないか。わが党は(改憲)4項目を条文イメージたたき台素案の形で示している。まさに国民に問うにふさわしいテーマだ。
 小西洋之氏(立憲民主・社民) 審査会で審議すべき重大な憲法違反が生じている。国政調査権の妨害たる決裁文書の改ざん、県民投票無視の(沖縄県名護市の)辺野古(へのこ)埋め立て続行という地方自治の本旨のじゅうりん、検察官の違法な定年延長など三権分立の毀損(きそん)、学問の自由を侵害する日本学術会議の任命拒否などだ。違憲行為で国民の自由、権利が奪われ、議会政治が破壊されている現状で改憲議論が許されるのか。
 西田実仁氏(公明) 憲法91条は、内閣は国会および国民に年1回、国の財政状況を報告しなければならないと定めている。その趣旨は主権者に財政状況の認識を深めてもらうことにあるはずだ。その意味から、参院に政府から独立した将来推計をする財政機関を置くべきだと考えている。諸外国では26カ国において独立財政機関を設置している。今後の議論の深化を求めていきたい。
 松沢成文氏(維新) 一字一句変わっていない憲法の改正は時代の要請で、国会が発議し、国民投票をもって果たすことが立憲主義の真の姿だ。維新は教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置の3点を軸に改憲を提起したい。同時に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、現行憲法に規定されていない緊急事態条項創設の必要性も含めて審議し、結論を得ることは喫緊の最重要課題だ。
 矢田稚子氏(国民民主) 党として昨年秋から精力的に議論を12回行ってきた。主なテーマは個人の尊厳を全うするためのデータ基本権、地域の尊厳を全うするための地方自治の拡大、国家の尊厳を全うするための統治機構の改革だ。審査会が新たな時代、新たな課題を踏まえ、この国の形、新しい働き方や新しい生活の仕方をデザインするような議論の場となることを期待する。
 山添拓氏(共産) 憲法審査会は2007年、改憲に執念を燃やす第1次安倍政権が強行して設置したもの。議論を進めることは、改憲案のすり合わせに向かいかねない。国民世論が改憲を求めない中、審査会を動かしてはならない。菅義偉首相も訪米中のインタビューで、現状では非常に難しいと認めなければならないと述べざるを得なかった。その事実を正面から受け止めるべきだ。
 渡辺喜美氏(みんな) 今、日本の憲法体制はさまざまなチャレンジを受けている。例えば尖閣(諸島の問題)がそうで、コロナ対応も一種の戦争。日本の憲法秩序、体制が危機にひんしている時、審査会がなぜ3年数カ月も開かれなかったのか。デジタル社会はデジタル共産主義と言われるほど、社会主義や共産主義と非常に近い。こうした議論を審査会を頻繁に開催することで行ってほしい。

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