障害者差別解消法改正案 国会で審議 石川准・静岡県立大教授に聞く

2021年4月29日 07時22分

<自由に動きたい 生きやすさを考える>(下)合理的配慮とは

 電動車椅子を使うコラムニスト伊是名(いぜな)夏子さん(39)=本紙コラム「障害者は四つ葉のクローバー」連載中=がJRに無人駅での介助を一時断られたことは、障害者への「合理的配慮」にも関わる問題だ。国会では現在、合理的配慮の提供を事業者に義務付ける障害者差別解消法改正案が審議されている。合理的配慮の在り方は。内閣府障害者政策委員会委員長の石川准さん(64)に聞いた。 (五十住和樹)

◆「共に考える」出発点に

 −障害者差別解消法のポイントは。
 この法律は行政機関と民間事業者を対象にしている。求めていることの一つは、不当な差別的取り扱いの禁止。例えば、障害を理由として入店を拒否したり、契約を拒んだりしてはいけない。もう一つは、過度の負担でない限り、合理的配慮の提供を拒んではならないということ。現在は民間事業者の場合、合理的配慮の提供は努力義務となっているが、行政機関と同様に義務とするのが今回の法改正の中心だ。
 −合理的配慮とは。
 事業者の例では、店舗などで障害のある顧客がぶつかった壁を取り除くために調整や変更を行うこと。気遣いや心配りではない。
 −壁というのは障害者が経験する「社会的障壁」。
 夜なら照明をつけたり、客が手に取れる高さに商品を並べたりと、社会では多くの人が困らないような環境調整がされている。だが、全ての人にとってそうではない。わずかな段差でも車椅子の人には高い壁。こうした壁は至る所にある。階段しかない駅や無人駅で人的サポートを必要とする乗客に対しても、合理的配慮の提供が求められる。
 −法では、合理的配慮は「その実施に伴う負担が過重でないとき」に行う、としている。
 どんなことが「過重」なのか、機械的に述べるのは難しい。一つ言えるのは、合理的配慮は今まさに困っている問題を速やかに解決する調整でなければ、意味がないということだ。
 伊是名さんのケースでは、JR側がただちに無人駅の来宮(きのみや)駅に職員を集めるのは厳しかっただろう。だが、「職員を配置できるとしてもお待ちいただかなければならないかと思いますが、熱海駅などとも相談してみます」と対応できるとよかったと思う。
 −法改正に当たり、障害者政策委員会は「合理的配慮の提供は、障害者と行政機関、事業者との間での建設的対話を通じて行われるべきだ」という意見を出した。
 障害者は、どんなことで困難にぶつかっているか、どうしてほしいかを説明する。事業者側はできることを提案する。お互いによい考え、提案を出し合い、それぞれの問題点を共有し一緒に考える。そこから生み出され、合意に至ったものが合理的配慮の提供につながっていく。
 法改正で事業者は、このような建設的対話に臨むことが義務になる。合理的配慮や過重な負担の事例を集め、ガイドラインを整備しながら着地点を絞り込んでいかないといけない。どうしたらよいのかと訴える事業者に、行政が相談に応じるのも重要だ。
 −事業者の合理的配慮が進んでいくと、どんな世の中になるか。
 障害者や高齢者、外国人なども含め、どんな人にも住みやすい環境になるだろう。多様性に柔軟に対応できる社会を開いていく端緒になるのではないか。
<いしかわ・じゅん> 1956年、富山県出身。97年から静岡県立大国際関係学部教授。専門は社会学、支援工学、障害学。

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