県北の里山 自然満喫 ロングトレイル一部開通

2021年4月29日 07時44分

県北ロングトレイルに設置された道標=いずれも大子町で

 県北六市町をつなぐ長距離自然遊歩道「県北ロングトレイル」の一部ルートが開通した。県北地域で体験型の観光交流を目指す県が二〇一九年度から進めていた。全長約三百二十キロのうち、大子町の約十二キロとごくわずかだが、関係者は「登山道を整備するだけでなく、地域の特色を生み出すことにつなげたい」と意気込む。 (松村真一郎)
 県北ロングトレイルは、県北の六市町(日立、常陸太田、高萩、北茨城、常陸大宮、大子)に点在する里山の自然や歴史・文化遺産、観光施設、温泉などをひとつなぎで巡り歩く。
 日本ロングトレイル協会のホームページによると、国内では整備中も含めて二十五コースが選定されているが、これまで県内にはなかった。全国には全長百キロを超すコースも少なくないが、県北ロングトレイルの全長三百二十キロは屈指の長さだ。
 コースの整備は、発案者でアウトドア用品店「ナムチェバザール」(水戸市)社長の和田幾久郎(いくお)さん(53)に委託している。県は一九、二〇年度に約四千二百万円を投じ、現在地の地図が呼び出せるQRコード付きの道標の設置やモニターツアーなどを実施。本年度予算には関連事業費四千九百万円を計上し、PRグッズの開発にも乗り出す予定だ。下草刈りなどを担うボランティア協力隊には四百五十人以上が登録している。
 今年三月末に一部開通したのは、月待の滝から生瀬富士を経由し、日本三名瀑(めいばく)の一つである「袋田の滝」周辺を結ぶルート。断崖絶壁の上から袋田の滝を見下ろしたり、川を渡ったりするなど危険な箇所も多い。県県北振興局の大須賀瑞樹補佐は「計画を練った上で自分の体力と相談しながら歩いてほしい」と事前準備の必要性を強調する。
 本年度は、今回開通したルートを延長する形で、籠岩(常陸大宮市)や西金砂神社(常陸太田市)を通る約五十六キロを整備する予定。コース全体が開通する時期は決まっていない。
 和田さんは「新型コロナウイルスの感染拡大により、地方の価値が見直されている。ロングトレイルが一部開通したことで、単なる『田舎』ではなく特徴あるエリアになり、それが移住にもつながるといい」と期待を寄せる。

◆記者も歩いてみました 目印 川には簡易な橋も

ルート上の川に架けられた木の橋

 登山やトレイルランの経験がある記者が今月初め、大子町内のコースを体験した。
 今回開通した約12キロのうち、生瀬富士(406メートル)から月居山(404メートル)を経て、土産物店などが軒を連ねる袋田の滝周辺に至る10キロ弱のルートを約4時間かけて歩いた。
 生瀬富士の山頂直前には険しい岩場が続き、鎖を頼りに息を切らしながら登った。山頂では、町内の街並みが眼下に広がっていた。あいにくの曇り空だったが、天気がよければ筑波山や那須連峰を望めるという。
 さらに歩を進めると、袋田の滝を見下ろせる崖の上に着いた。絶好の展望スポットだが、崖に柵はなく注意が必要だ。
 そこから一度、集落まで下る途中に川を渡る場所があった。流れが急な場所には簡易な木の橋が架けられていたが、向こう岸までは川から頭を出した岩を伝って渡らなければならず、靴がぬれることも覚悟しなければならない。
 集落から再び山中に入ると人の姿は全くなくなったが、黄色い目印がルート上に取り付けられており、道に迷うことなく月居山に到着した。
 山の下は桜が満開だったが、山中は新緑の季節に向けて木々が芽吹き始めたばかり。登山道では、イノシシ猟をしている男性に出会った。月居山から袋田の滝周辺まで下山するのに時間はかからず、観光地と豊かな自然の近さを実感した。 (松村真一郎)

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