「バイデン流の米国第一」の側面も 米大統領施政方針演説を読み解く

2021年4月29日 21時49分

初の施政方針演説をしたバイデン大統領=28日、ワシントンで(ワシントン・ポスト紙提供、AP)

 バイデン米大統領は28日に行った初の施政方針演説で、翌日に就任100日を迎える自らの政権の成果を誇示した。トランプ前大統領の米国第一主義を批判し政権交代したバイデン氏は、民主主義を擁護する立場から、中国やロシアなどの権威主義国に、日本を含む同盟国と協調して対抗していく方針を打ち出した。ただ新型コロナウイルス対策をはじめ「バイデン流の米国第一」の側面もみせている。(ワシントン・金杉貴雄)

◆米国1国だけで世界のワクチン接種の2割

「就任時は危機の中にいた。再び世界をリードしている。100日で2億2000万回の新型コロナワクチンを接種した」。バイデン氏は演説でそう誇ってみせた。
 政権発足の2週間前に米議会襲撃事件が発生。新型コロナの感染は1日30万人を超え、死者数は世界最悪を更新し続けた。約200兆円もの経済対策法を成立させたが、コロナ収束の切り札はワクチンしかない。
 「米国民への接種が優先だ」。大統領令や戦時の国防生産法を駆使し、遅々として進んでいなかった接種を加速させた。全国民分のワクチンを前倒しで確保するめどが立っても、他国への支援は一部にとどめた。
 現状では世界人口の4%にすぎない米国が、1国だけで世界のワクチン接種の2割を占める。死者数も57万人と2割近いため、やむを得ない面があるが、急激な感染増に苦しむインドなどから批判の声が上がり始め、バイデン氏は急きょワクチンやその原料、医療物資などを緊急支援する考えを表明した。

◆「NATOのように」 対中国への安全保障強化、明言

 外交方針で明確にしたのは「民主主義国と権威主義国の競争」と位置付ける中国やロシアへの対抗だ。「人権が露骨に侵害されている時、米大統領が沈黙を保つことはできない」。バイデン氏は28日の演説でもそう警告した。
 民主主義の普遍的価値を重視しているだけではない。バイデン氏は演説で「中間層の利益のため外交を進める。米国の利益を守ることを習近平国家主席に明確にした」と強調し、中国との競争は自国の国益追求のためとの考えを強調した。
 中国には、同盟国や友好国との結束で向き合うとしている。その「最前線」にいるのが日本だ。対面式で初の首脳会談を菅義偉首相と行い、共同声明に中国が統一を目指し圧迫を強める台湾の安定について、半世紀ぶりに明記した。
 バイデン氏はこの日「欧州での北大西洋条約機構(NATO)のように、インド太平洋で強力な軍事力を維持する」と対中国で多国間での安全保障を強化する考えも明言。政権が重視する気候変動問題でも、日本などに温室効果ガス削減で高い目標を掲げるように求めている。

◆「米国民の利益」の観点で外交

 バイデン政権はアフガニスタンから、駐留米軍を20年ぶりに撤退させることも決定。治安悪化も懸念されるが、政権高官は「米国にとってより重要な対中国や気候変動に注力するため」と説明している。
 カーネギー倫理国際関係協議会のニコラス・グヴォスデフ上級研究員は「バイデン政権は『米国民の利益にどう影響するか』との観点から外交を組み立てている」と指摘し、同盟国もより多くの負担が求められるとの見方を示した。

◆日本が100日で全人口の3割に接種するには?

 バイデン米政権は発足後100日間、1日平均200万回以上の新型コロナワクチン接種を進め、全人口の3割への接種を完了させた。日本の場合、医療従事者(480万人)と高齢者(3600万人)を合わせた計4080万人が全人口の約3割に相当。米国と同様に今後100日で接種を完了させるには、現在の5倍以上の接種ペースが必要となる。
 日本のワクチン接種は、27日現在でまだ計約320万回で、2回接種を完了したのは人口の1%弱。4080万人の2回接種完了(8160万回)には、残り7800万回の接種が必要となる。
 日本の1日の接種数は15万回(7日間の移動平均)。今後加速させるとして28日以降、1日平均で5倍のペースで接種を続ければ105日目の8月10日に必要数に届くが、仮に3倍にとどまれば完了は10月中旬までかかることになる。

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