「憲法が根ざした戦後の表現を感じて」 アート作品と条文のコラボ本、国際デザイン賞グランプリに  

2021年4月30日 12時00分
 憲法条文と絵画や写真、漫画などの作品を一対にした異色の単行本「日本国憲法」(TAC出版)が、国際デザイン賞「東京TDC賞2021」でグランプリを獲得した。39年前に刊行されたベストセラーを原点に、東京・京都で活動するグラフィックデザイナー松本弦人げんとさん(60)がデザイン・編集を手掛けた。憲法の施行から来月3日で丸74年。松本さんは「憲法が根ざした戦後の生活、表現を感じてほしい」と語る。

「日本国憲法」に掲載されている9条1項の条文と、コラージュ作品「俺の知ったことじゃない」=木村恒久作、TAC出版提供

 天皇を国家、国民統合の象徴と記した1条。右ページにルビを振った条文と英訳を縦横に配置し、難しい言葉の脇には解説文が付く。見開きの左ページは、ろう人形の昭和天皇の写真(杉本博司撮影)が全面に。公務員による拷問を禁じた36条の横には赤塚不二夫作の「天才バカボン」に登場する警官が拳銃を乱発するおなじみの漫画がある。

松本弦人さん

 戦後の日本で制作された美術作品から、松本さんがまず約2000点をピックアップ。各条文のイメージや構成、全体のメリハリなどを意識しながら、最終的に作者側の許可を得た69点を選んだ。「非常に大変で楽しい仕事だった。作品の解釈は一つではない。条文も広く捉えられるものもある。うまく組み合わせることを考えた」という。
 思い入れがあったからこそ、9条の作品選びには悩んだ。「今は21世紀。9条以外にも大切な条文はいっぱいある。9条だけが独り歩きするような本にはしたくなかった。軽い感じがいいと思った」という。
 9条1項は、米政府に核開発を進言した物理学者アインシュタインの舌出し写真と広島原爆ドームのコラージュ(合成)作品「俺の知ったことじゃない」(木村恒久作)を添えた。込められたメッセージが皮肉的で、かつ明快だからだ。
 一目見て、作品との関連性が分かりにくい条文もある。作品の成り立ちを知ることで明確につながりが見えたり、まったく関連がないものもあるという。

◆21世紀版の「日本国憲法」とは…

 この本には、原作が存在する。1982年に小学館が発行した「日本国憲法」だ。日本の暮らしや四季の写真とともに憲法条文を紹介する組み合わせの斬新さが評判となり、130万部超の売り上げを記録した。

島本脩二さん

 当時、編集を担当した島本脩二さん(74)が、同書の「21世紀版」制作を松本さんに持ちかけ、新型コロナウイルス感染拡大以前の2019年11月に出版が実現。コロナ禍でも国会では与野党が憲法の自由討議を重ねる折に、受賞が昨年12月、発表された。島本さんは「国民にいろんな思いがある中、いま作品が評価してもらえたことがありがたい」と語る。
 編集作業中に愛知県の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で文化庁の補助金不交付問題が起き、表現の自由も議論になった。美術作品を主体に憲法を表現した今回の出版に支障がないよう作品の一部は差し替えた。松本さんは「個人の表現はできる限り担保されてほしい。憲法に書かれた本質もそう。当事者たちはいちばん難しいさじ加減で、ものを作っていると思う」と話す。全国の書店で販売中。税込み1870円。(柚木まり)

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