<食卓ものがたり>粒しっかり 江戸前の新顔 ホンビノス貝(千葉県船橋市)

2021年5月1日 07時19分

江戸前の新名物ホンビノス貝と、滝口光淑さん=千葉県船橋市で

 徳川将軍家に献上する魚介を育んできた伝統ある漁場、東京湾の三番瀬(さんばんぜ)。アサリやノリで知られるが、江戸前の新顔として最近売り出し中なのが、北米原産のホンビノス貝だ。
 「漁師の救世主。はるばる遠くから助けに来てくれた」。三番瀬に接する千葉県船橋市の漁師、滝口光淑(みつよし)さん(58)は笑う。
 東京湾では一九九八年に初めて見つかった。船の重しに使うバラスト水に紛れ込んだ稚貝が繁殖したものといわれる。
 見た目はハマグリ似。直径は六〜七センチから十数センチのものまで。「最初は、変わった貝が交ざっていると思い、捨てていたんです」と滝口さん。ある時、ゆでて恐る恐る口にすると「うまかった」とにんまり。
 粒が大きくプリプリ。ハマグリより歯応えがある。コクのある濃いだしが取れるのも魅力。北米では、クラムチャウダーの具として定番の食材。砂地に暮らすアサリと違い、湾内の泥地に生息するホンビノスは砂抜きの必要がなく、調理負担も少ない。
 微生物の死骸などが分解され、海が「酸欠」状態になるなどした青潮の影響もあり、近年はアサリなどの漁獲量が減少。一方のホンビノスは青潮に負けない生命力で、大量に繁殖した。「殻からあまり顔を出さず、海水をあまり取り込まないから青潮に強かったのでは」(船橋市漁業協同組合)。生態系への悪影響もなしとされた。
 最初は邪魔者扱いだったが、「美味で安い」と市場で取引されるように。船橋市では二〇〇七年度の漁獲量は約百九十トン。知名度が高まり、千葉ブランド水産物に認定された一七年度には、約千六百八十トンまで増えた。
 ホレ込んだ滝口さん。漁師仲間とキャラクター「ビノスおやじ」を考案し、食べ方などを伝える歌を動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信。「ゆでて、しょうゆとマヨネーズをつけて食べると最高ですよ」
 文・写真 砂本紅年

◆味わう

 ホンビノス貝は、船橋市漁協の直売所「三番瀬みなとや」=電047(434)0668、火、水曜定休=でも入手できる。700グラム500円。直売所では浜焼きを食べられるほか、ホンビノス貝のつくだ煮=写真、80グラム600円=も売っている。船橋市などは、ふるさと納税の返礼品にチョイス。「バーベキューにもぴったり。火を通しても殻が閉じたままのとき、トングなどでたたいて衝撃を与えると開きます」(同漁協)

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