<くるみのおうち>(6)次の一歩へ 涙の卒業「頑張ったね」 先生、地域の支えに感謝

2021年5月2日 06時59分

2013年3月、小学校の卒業証書を手にした太田直樹さん(右)と父の修嗣さん=幸区で(太田修嗣さん提供)

 お互いを理解するために、交流する場がほしい。そう願って、息子が通う小学校の特別支援学級の親子で始めた「さくらの会」は、二年目に入ると十五家族ほどに増えました。ピクニックやカレー作り、季節のイベントも企画して、楽しむことができました。
 地元の社会福祉協議会から助成金も出て、活動が充実する半面、親の力だけで運営する難しさにも直面していました。
 たとえば、子どもの特性はさまざまで、全員で楽しめるイベントを行うことができないこと。まとめ役の私に負担が集中して息子のケアに手が回らず、息子がイベントに参加できないケースも増えていました。
 「みんなのための居場所」という言葉の響きはきれいだが、親の会では限界がある。専門家やボランティアの力が必要だ。そういう団体に発展しない限り、障害のある子と親の生きづらさは解消されない−。私は、NPO法人の設立を意識し始めていました。
 学校では、発達障害に関して特別授業をする機会がありました。息子のクラスメートに「(直樹君は)どうして他の子と違うの?」と尋ねられたことがあったため、一度説明させてほしいと提案していたのです。
 他の保護者と協力し、発達障害の特徴を紙芝居風に説明したり、疑似体験をしてもらったりしました。「そういうことだったんだなと思った」と子どもたち。ごまかしたりうやむやにしたりするのではなく、まずは知ってもらうことが大切だと実感しました。
 直樹は二〇一三年三月、小学校の卒業式を迎えました。苦手な行事も多かったけれども、素晴らしい先生たちに恵まれ、最後まで頑張ることができました。
 式当日も地域の見守りの方がいらしたので「おかげさまで、この日を迎えることができました」と私。すると「何だかうれしくて泣けてくるね」と言ってくれました。いつも見守ってくれていたことに感謝です。
 いよいよ卒業式本番。息子は校長先生から卒業証書を受け取って握手、一礼することができました。ところが卒業生の席に戻る途中、なぜかキョロキョロし始めました。やがて保護者席にいる私に気づき、なんとその場で私に向かって一礼してくれたのです。突然のことに、私も思わず一礼しました。
 「よく頑張ったね。卒業おめでとう」と心の中で言いながら、涙を押しとどめることができませんでした。 (太田修嗣・NPO法人「くるみ−来未」理事長)
 ◇次回は九日に掲載予定
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