弁当はペット用の米… コロナ禍で揺らぐ「健康で文化的な最低限度の生活」 専門家「助けてもらえる構造じゃない」 

2021年5月2日 19時51分
 収まる気配のない新型コロナウイルス禍が、人々の生活に深刻な影を落としている。コロナ関連の解雇や雇い止めは10万人を超え、倒産は1400件に。困窮者支援団体の食品配布に並ぶ人の列は長くなる一方だ。ネットカフェ暮らしで心のバランスを崩す人、食事も十分に取れない人…。憲法25条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利をうたう。支援団体の関係者は「実態を伴った生存権が保障されるべきだ」と訴える。(中村真暁)

鳥の餌にもされる砕米がぎっしりとつまった弁当箱=いずれも東京都内で

◆ペット用砕米で満たす空腹

 4月下旬、東京都内の公園で40代の男性が広げた弁当箱には、サバの缶詰を使った炊き込みご飯がぎっしりと詰まっていた。「砕米さいまいがあることを知って良かった。これでかなり節約になる」
 砕米は精米の過程などで細かく割れた米で、鳥やペットの餌用に売られている。男性は23区内の月5万円のアパートで暮らし、食費は月1万円ほど。腹を満たすために、5キロ500~800円の砕米を食べ続けている。

◆夢も安定した職もあきらめ…見えない未来

 ボクサーになろうと、高校卒業後に中部地方から上京した。データ入力などの非正規労働をしながら、26歳の頃にプロ資格を取得したが、ボクシングで食べていくことはできず、2008年のリーマン・ショック前後からは非正規の仕事も減った。
 生活のため借金が少しずつ膨らみ、100万円になるとボクシングを断念。就職活動もしたが「年とっちゃったね」と何十社も断られた。
 安定した職はあきらめている。それでも「借金は自分で何とかしなければ」と懸命に働き、1年半ほど前に完済した。しかし昨年12月ごろから仕事がなくなり、貯蓄は10万円にまで減った。いったん申請した生活保護も取り下げた。家族に連絡されるのが嫌だったし、「働けるのに使うのはルール違反」という空気を、社会から感じるためだ。
 国のコロナ対策で拡充された家賃支援制度を使い、今年3月からはコロナワクチンのコールセンターで働くが、契約は5月まで。「長く働ける職場で働けたらいいなと思うけど…。10年後なんて想像できません」

非正規社員を続けてきた男性は砕米を食べて、空腹をしのぐ

 憲法25条第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する 

◆食料配布会場の利用者急増 専門家「休める住宅を」

 困窮者支援のNPO法人「TENOHASI(てのはし)」が東京・池袋で月2回開く食品配布の会場には、生活に行き詰まる大勢の人が訪れる。20年度は1回当たりの利用者は平均237人で、前年度の1.4倍。特に昨年11月以降は増加が著しく、最近は330人を超えることも。多くが正社員になれず、不安定な雇用形態で働いてきた人という。
 ネットカフェ暮らしで仕事も掛け持ちして幻聴が出るようになった女性や、仕事がなくなり寮費が払えず居場所を失った男性。事務局長の清野賢司さんによると、そんな状況でも「甘えてはいけない」と生活保護などを利用せず自らを追い込んだり、生活保護を使えても、望まない福祉施設の複数人部屋の利用を自治体の担当者から求められたりする人がいるという。
 清野さんは「困っている人が相談できて、助けてもらえる構造になっていない。ホームレスになっても、相談すれば休める住宅を確保できるような社会にすべきだ」と話す。

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