<民主主義のあした>市民の意見を熟成させる「討論型世論調査」 議会制民主主義を補完するツールに

2021年5月3日 06時00分
 くじ引きで選ばれた市民らが討論を重ね、意識がどう変わるかを調べる「討論型世論調査(DP)」も、議会制民主主義を補完する取り組みの1つだ。欧米では1990年代から活用され、日本でも2009年以降、国や神奈川県、藤沢市などが計7回実施した。

◆質疑重ねるうちに変わる意識

 札幌市は14年、「雪と暮らし」をテーマにDPを行った。無作為抽出した18歳以上の市民3000人に「市の除雪をどう考えるか」「冬で大変なことは」など78問からなる調査票を郵送。討論会参加の意向も尋ね、返送してもらった。
 後日、参加希望者約200人が市内の会場に集まった。始めに雪と暮らしに関するアンケートを改めて実施した後、15人程度のグループごとに「市に望むこと」や「自分たちにできることは」などを話し合った。後半は、街づくりが専門の大学教授や除雪の専門家らに、海外の雪対策や町内会でやるべきことなどを参加者が質問。さらに討論と質疑を重ね、夕方に再びアンケートをした。
 午前と夕方のアンケート結果を比べると、「市の情報への信頼性」などには変化がほとんどなかったが、「税負担が増えても市は雪対策を強化すべきだ」との意見が減少。雪かきボランティアへの参加の意向や除雪トラック助成制度の活用を望む意見が増えた。

◆旧民主党政権は「原発ゼロ」の判断材料にしたが…

 このDPに協力した曽根泰教・慶応大名誉教授(政治学)は「行政は理解を深めた市民の意見を把握できるだけでなく、無作為に選ばれた人たちの意見なので政策に反映しやすい。庁舎の改築や病院移転問題、選択的夫婦別姓の是非などさまざまなテーマで活用してほしい」と望んでいる。

民主党政権下で行われた「討論型世論調査」。新たなエネルギー・環境政策の決定に向けて、参加者は電源に占める原発比率をどうすべきか熱心に議論した=2012年8月、東京都港区で

 旧民主党政権が12年に「原発ゼロ」の政府方針を決めた際にも、DPはパブリックコメントや意見聴取会と合わせて重要な判断材料となった。政府は12年、30年の原発比率について「0%」「15%」「20~25%」の3案を提示。無作為に選ばれた男女285人が議論を重ねた結果、0%案を支持する人は32%から46%に増えた。
 しかし12年末の衆院選で民主党が下野すると、原発ゼロ方針は立ち消えとなった。国としてのDPも以後、開催されていない。(三宅千智)

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧