県内で広がる「パートナー制度」 さいたま市を皮切りに12市町 LGBTカップルらに安心感、満足感

2021年5月3日 07時12分

本庄市のパートナーシップ宣誓証明書とカードを持つ2人=本庄市役所で

 LGBTなど性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が、埼玉県内でも増えている。昨年四月のさいたま市を皮切りに十二市町。他の自治体でもこの流れに続く動きがあり、当事者からは歓迎の声が上がる。 (寺本康弘)
 「市として認めてくれたという感じがすごくある」
 今年四月に本庄市が始めたパートナーシップ制度で証明書を受け取った会社員(23)は、うれしそうに話す。心と体の性が一致しないトランスジェンダーで、体は女性だが心は男性。付き合って三年余りのパートナーとの関係を認めた証明書は、額に入れて自宅リビングの壁に飾った。「二人の戸籍みたいなもの」と満足そうだ。
 証明書とともに受け取った証明カードは常に持ち歩く。けがや病気の際、病院で家族しか面会ができない場合でも、二人の関係が公的に認められていると証明できるように備える。
 現状の制度では、法律上の結婚のような相続など財産上の権利や税金の控除といった法的効力は発生しないが、自治体は医師会や不動産事業者、商工団体などに制度を周知。理解促進を通じてカップルへの配慮を促す。
 さいたま市では三月末までに二十五組がこの制度を利用した。担当者は「これまで状況把握は難しかったが、一定数の方がいることが明らかになった」とし、今後の施策につながる可能性もあるという。鴻巣市は宣誓した二人が「事実上婚姻関係と同様の事情にある」として市営住宅に入居できるようにした。
 LGBTの権利を巡っては、札幌地裁で三月、国が同性婚を認めないのは違憲との判断を示すなど変化の兆しが出つつある一方で、無理解や偏見による暴言が議会でも起きている。
 県内のLGBTなどの当事者や支援者でつくる「レインボーさいたまの会」は、各地の議会への請願などを通じて制度の創設を求めてきた。加藤岳代表は「制度はカップルの安心感や満足感につながる」と重要性を指摘。県にも制度導入を期待しているという。
<パートナーシップ制度を導入した県内の自治体(レインボーさいたまの会の調べ)>
 さいたま市、川越市、坂戸市、北本市、鴻巣市、桶川市、伊奈町、上尾市、越谷市、三芳町、本庄市、行田市

◆同性婚否定「違憲」判決 岡田順太・独協大教授に聞く

 全国の自治体でパートナーシップ制度の導入が進む中、札幌地裁で三月、同性同士の結婚を認めていない民法などの規定は「違憲」と判断する判決が出た(原告は控訴)。独協大の岡田順太教授(憲法学)は「国会に対して(同性カップルに対する制度の)議論に向け背中を押す意味がある。ターニングポイントになるのでは」と判決の持つ意味を説明する。
 地裁判決は、異性間の結婚なら得られる配偶者の相続権などの法的効果を、同性愛者に一部すら受ける手段を提供しないのは合理的根拠を欠く差別で、法の下の平等を定めた憲法一四条に違反すると判断した。パートナーシップ制度は法的拘束力はないが、判決が示した考えを部分的とはいえ実践しているともいえる。
 一方で岡田教授は「判決を『同性婚を認めた』と受け止めている人が多いがそうではない」とも指摘する。法的利益の差を是正するよう立法に要請しているだけで、パートナーシップ制度の延長ですむとも解釈できるため、法律上の結婚を望む当事者が納得できるのか懸念が残るという。
 また判決は、同性婚を認めていないのは、婚姻について定めた二四条に違反しないとした。同条は「両性の合意」「夫婦」など男女を想定した文言で異性婚について定めたもので、同性婚のことは定めていないという筋立てだ。
 岡田教授は「判決は核心部分の判断を避けた」とみる。法的利益だけに着目していて「婚姻によって得られる満足は考慮していない」からだ。
 岡田教授は、憲法二四条が保護する法益を「二人の継続的関係性の中で生まれてくる親密性」と解釈。それは異性、同性に関係なく守られるべきだと主張し、「そうした議論をして、具体的な法制度の仕組み作りに取り組むべき段階だ」と話した。 (寺本康弘)

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