<東海第二原発 再考再稼働>(26)市民の声寄り添い判断 水戸市長・高橋靖さん(55)

2021年5月3日 07時13分
 水戸地裁が日本原子力発電(原電)に東海第二原発(東海村)の運転差し止めを命じた判決は、地震対策など事業者側の話ではなく、原発から三十キロ圏内の自治体が策定している避難計画など防災対策の不備が差し止め理由になった。
 東海第二の再稼働の際に事前了解が求められる三十キロ圏内の六市村の一首長として、判決前から「実効性ある避難計画ができなければ東海第二の再稼働は認めない」と言ってきた。それは、市民の生命財産を守るという観点からの政治判断。その政治判断が今後、普遍的な司法判断になるのかということは注視したい。
 水戸市は東海第二で事故が起きた際に、県内外の計四十自治体に避難する。
 現時点では、全自治体と協定を結び、例えるならば玄関に入るのが許可された状態。避難ルートも決まっておらず、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、避難所を見直す可能性もある。課題を解決しないと、実効性ある避難計画として市民に示すことはできない。
 ただ、三十キロ圏の自治体で最多の人口二十七万人を抱え、計画を策定することの難しさを肌で感じている。これほど多くの市民の生命を優先して避難させることの責任は重い。
 策定に向けて、国や県には引き続き、避難時のバスの確保などについて積極的に関与してもらいたい。県などが課題解決策を示さない限り、市としても計画は作れない。
 避難計画の不備を理由にした差し止め判決が出た以上、原発を動かしたい人たちが策定に向けて積極的に関与すべきだ。
 四月にあった六市村の首長と原電の会合で、原電に対して「どういう被害があった場合にどう避難するかの想定を示してほしい」と求めた。私たち行政ばかりが汗をかくのではなく、原電も努力しなければならない。
 安定的な電力確保や二酸化炭素(CO2)を主とする温室効果ガスの排出を削減するためには、原発に頼らなければならない部分もあり、まだまだ原発は必要と考える。ただ、東海第二については、市民理解と実効性ある避難計画がなければ動かすべきではない。
 原電は二〇二二年十二月に防潮堤などの工事を終えるとしているが、私が再稼働の是非を判断する時期は、事業者のスケジュールにこだわらず決める。
 判断するためには、原子力規制委員会による安全性の「お墨付き」があることと、実効性ある避難計画ができていること、そして「実効性があるかどうか」を市民に判断してもらうための声をいただくことが必要になる。
 実効性ある避難計画ができて原発が動いたとしても、事故があったら逃げなければならない。逃げるということは、生活を失うこと。実効性ある避難計画はできるかもしれないが、市民から逃げることについて「ノー」と言われた時は、市民に寄り添って判断しなければならない。アンケートを実施し、できるだけ多くの市民の声を把握したい。 (聞き手・松村真一郎)
<たかはし・やすし> 1965年、水戸市生まれ。明治大大学院政治経済学研究科修士課程を修了した後、鳩山邦夫衆院議員の秘書や水戸市議3期、県議2期を経て、2011年の市長選で初当選した。現在3期目。

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