出向者が仕様書作成に関与、官民密接の甘い運用 マイナンバー事業

2021年5月4日 06時00分
 地方公共団体情報システム機構(J―LIS)が担うマイナンバー事業で、社員を出向させている特定の企業に受注が集中していることが鮮明になった。機構は、発注の際の事業者向け説明書に当たる仕様書の作成で、出向者が助言する場合があると認めた。入札業務への関与を明確に制限する国に対して、機構には同様の内規がなく癒着防止の意識は希薄だ。(デジタル政策取材班)
 機構は仕様書の作成に関し「意思決定プロセスに関与しない範囲で、出向者からアドバイスを受けることはありうる」と説明した。
 出向者が直接仕様書を書くようなことはないが、システムの機能や事業者への要望など仕様書に必要な内容をまとめる際、出向者に助言を求めることがあるという。仕様書作成には専門知識が必要で、機構の職員だけでは対応が難しいというのが理由だ。担当者の1人は「機構の職員で実際にシステムを作った人はいない。個人的にはシステムを作ったことがない人間だけで仕様書を作ることができるかは疑問だ」と話す。
 業者に業務の要求水準や手順などを示す仕様書は、内容次第で受注を左右する。出向元企業が得意な技術の採用を助言すれば、受注に有利となりかねない。機構の出向元企業はマイナンバー事業で1000億円超を受注している。
 機構は「予定価格の設定など意思決定プロセスには関与させず、秘密保持の契約も結んでいる」などと、癒着に結びつかないような対策を講じているとする。
 これに対し、同じように民間出向者を抱える内閣官房IT総合戦略室の場合、出向元企業が入札に参加する可能性があれば、出向者は業務から外される。担当者は「出向者が関わると疑義が生じる可能性は高い。手心を加えられると見られないよう一線を引いている」と説明する。
 機構の出向元企業の選定は、開発を受注した業者に出向を依頼する事例が多いといい、特定企業への依存を強める一因となっている。機構の木嶋淳管理部総務課長は「システムの開発業者なら(その後の)運用をスムーズに行うことが期待できる」と説明。ただでさえ発注先が固定しがちなデジタル事業で、開発業者から出向を募れば、ますます途中で別の業者に乗り換えにくくなってしまう。
 実際、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所は共同で機構の中核システムの開発を担い、出向者の数は突出した。この4社は保守・運用などその後の事業も受注し続けている。

◆官民の透明性確保 デジタル庁でも課題

 官民の密接ぶりはNTTグループや東北新社による総務省幹部への接待問題が記憶に新しい。政府が9月に新設するデジタル庁では、職員の5分の1に当たる約100人を民間から採用する計画で、官と民の透明性の確保は今後のデジタル行政で大きな課題だ。
 デジタル庁は政府のデジタル化の司令塔を担うため、専門知識を持つ民間人材が欠かせない。
 「デジタル関連の事業では随意契約などが横行し不透明な契約が問題になってきた。デジタル庁に民間企業在籍者を登用すれば特定企業に都合のよいルールづくりや予算執行が行われるのでは」。3月9日の衆院本会議で、共産党の塩川鉄也氏は官民癒着の懸念をこうただした。
 癒着の懸念に対して、菅義偉首相は「利害関係が相反する際には、当該業務から隔離する」などと応じた。ただ、具体策は「検討中」(内閣官房IT総合戦略室)で定まっていない。
 現在のデジタル化の旗振り役を担うIT総合戦略室でも多数の民間出向者を抱える。このため出向元企業が入札に参加する可能性がある場合、出向者をその業務から外すなど制限がある。別の日の国会で、平井卓也デジタル改革担当相はこのルールを踏まえ「具体的な運用についてさらに有識者を含めて検討したい」と述べるにとどまっている。
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