「イングランドは兄弟」「独立なんて狂気」反対派の地盤

2021年5月4日 06時00分

<連載「独立を問う スコットランド議会選」㊦>

 英イングランド地方北部の都市カーライルから、車で20分ほど。スコットランド地方との境界を越えてすぐの緑地に、高さ2メートル余りの石塚が見えた。内部に入ると1枚の石板がある。「スコットランドとイングランドは兄弟みたいに団結してきた。一緒のままでいよう」と刻まれていた。

4月26日、英スコットランドのグレトナ・グリーンで、イングランドからスコットランドへ入ったことを示す看板

 スコットランドの街グレトナ・グリーン。独立の賛否が問われた2014年の住民投票時、反対運動の中心地だった。石塚は、国内各地の反対派が大勢の思いを形にしようと、10万個の石を持ち寄って造った。
 買い物や仕事で日々境界を越える地元住民もほとんどが反対派。過去の議会選で、独立を目指すスコットランド民族党(SNP)がこの選挙区で勝ったことはなく、石塚近くでホテルを営むイアン・ブロートンさん(62)は「ここは言葉もイングランドなまり。独立なんて狂気さ」と語った。

◆境を越えた結婚が結び付き強める

 街とイングランドの強い結び付きは約270年前に始まった。当時のイングランドは結婚に関し、一定の年齢までは両親の承認が必要など法規制が厳しかった。このため、規制が緩いスコットランドで結婚しようとするカップルが続出。境界沿いのグレトナは、イングランド人男女の結びの場となった。
 ホテルや式場などの結婚式関連業は基幹産業となり、新型コロナウイルス禍前の一昨年は人口約3000人の街で3400組が挙式。ただ、多くは街の歴史にロマンチックさを感じたイングランド人で、スコットランドが独立して「外国」になれば、手続きの複雑化で利用者が減るのは必至だ。
 「独立はこの街に大打撃を与える」と、新郎新婦向けの美容院を妻と営むスコット・リトルさん(32)は言う。さらに、持病に伴いコロナワクチンの早期接種が認められた経験を語り「大国だから大量のワクチン接種を実現できた。小国には無理だ」と国力低下も懸念する。

◆独立に冷ややかな視線

 独立反対の意識は、英国の他の地方と社会・文化的つながりをもったり、経済の低迷を不安視する人に強い。反対支持は欧州連合(EU)離脱で落ち込んだが、英政府のワクチン政策の成功で再び上昇。独立反対の保守党、労働党などは議会選に向け、コロナ禍からの再建を前面に掲げて支持層拡大を狙う。
 ただ、英リーズ大のスチュアート・マカヌラ准教授(政治学)は「独立反対政党で過半数を占める可能性はあまりない」と分析する。議会選のうち小選挙区では、独立支持政党で候補者を立てたのはSNPのみ。一方、独立反対側は各党が候補を擁立しており、反対票が分散するためだ。
 SNPは独立支持政党で過半数を占めれば、2回目の住民投票実施の同意を英政府に求める。実施時期は改選後の議員任期(5年)の前半の計画だ。ただ、リトルさんは冷ややかだ。「SNPはいつも『スコットランドを見ていない』と英政府を非難する。でも、彼らだってこの街を見ていない。似たり寄ったりさ」
 (英グレトナ・グリーンで、藤沢有哉、写真も)

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