滝野川のソースメーカがつくる名物焼きそば 野菜のうま味でファン増加中 「北区の新しい名物に」

2021年5月4日 07時17分

<滝野川新聞>

 62もの区市町村がある東京。担当記者が「編集長」になって一つの街を掘り下げる。

◆東京最古のソース会社

 板橋区に隣接する滝野川の住宅地。香ばしい香りに誘われるように、あちこちから人が集まってきた。
 お目当ては「トキハソース」の工場で販売する「瀧野川やきそば」(五百円)。
 もちもちの中太麺に、同社の焼きそばソースがよくからむ。具材のきんぴらごぼうとローストビーフも、同社の特選ソースで味付けしている。きんぴらごぼうは、深い黒土に覆われていた滝野川が、江戸時代はゴボウとニンジンの産地だったことにちなんでいる。
 二〇一九年六月に始めた焼きそばは「ソース会社がつくる本格焼きそば」と評判で、毎週水曜日の販売日には長蛇の列ができた。
 しかし、昨年はコロナ禍で販売を中断。先月下旬、約一年ぶりに完全予約制で再開した。

ソース会社の本気が詰まった瀧野川やきそば

 豊島区から買いに来た会社員の女性(36)は「一年半ほど前に初めて食べてファンになった」と大事そうに焼きそばを受け取っていた。キッチンカーで焼きそばを販売していた田口伊津子社長(58)は「北区の新しい名物にしたい」と自信を見せた。
 同社は一九二三(大正十二)年創業の東京最古のソースメーカー。「トキハ」は「ときわ」と読む。野菜パウダーや缶詰ではなく、近くの市場から仕入れた新鮮な野菜を使い、昔ながらの製法にこだわる。
 主力は業務用で、誰もが知るインスタント焼きそばのソースのベースも供給しているそうだ。
 家庭でも同社のソースは焼きそば以外に、肉じゃがやサラダなど幅広い料理に使えると人気だ。

熟成された生野菜エキス

 しかし、最近は少子高齢化などの影響でソースの消費は減少傾向にあるという。
 そこで、ソースの魅力を知ってもらおうと、焼きそば販売を始めた。工場には珍しいソースの自販機もあり、特選、焼きそばソースのほか生ソース(ウスター、中濃、濃厚)など全六種類が買える。
 二年後、創業百周年を迎える。田口社長は「ソースはなくならない調味料」。
 「うちのソースは、野菜や香辛料のうま味が詰まっている。いろいろな使い方を提案して、愛用してもらいたい」
 瀧野川やきそばの販売は毎週水曜日午前11時半〜午後1時。事前予約が必要。予約はトキハソースのLINE、または本社工場直売所窓口で(前週の木・金曜午前9時〜午後4時半。正午〜午後1時は昼休み)。

◆北区

 滝野川がある北区は東京23区の北部に位置し、総面積は20.61平方キロメートル。広さは23区内で11番目。人口は35万2638人で、世帯は19万9491(今年4月1日現在)。区によるとJRの駅が都内最多の11駅あり、JR板橋駅も滝野川にある。

◆渋沢グルメ 盛り上がり

★北区は今、NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」にちなんで、渋沢栄一グルメが盛り上がっている。大正時代創業の菓子店「吾当家(ごとうのか)」は、渋沢のシルエットの焼き印を押した瓦せんべい=写真下=を開発。1袋440円で卵味とみそ味の2種類。3代目店主の原田実さん(71)が昔ながらの製法で手づくりする。「ドラマを見た人が買ってくれるようで、反響がうれしい」
★渋沢の好物だったオートミールを加えたパスタとうどんを開発したのは、製麺会社「江戸玉川屋」。パッケージには40代と60代の渋沢のイラスト=写真下。プロテインも配合。「異なる素材を組み合わせたのは、革新的な渋沢の考えにあやかった」と同社。1袋432円。
 せんべいも麺も「王子駅前サンスクエア」にある「北区の自販機」で購入できる。

◆編集後記

 「トキハソース」のソース製造現場は涙なしには見られなかった。
 原料のタマネギ、ニンジンなどの野菜を細かく砕く様子を取材するため工場の中に。わずか数分で目が痛くなり、気がつけば大粒の涙。カメラマンも涙を流しながらシャッターを押していた。約四十キロのタマネギの威力は想像以上だった。
 知名度は高くないが、一度食べるとやみつきになる人が多いという。新鮮な原料のうま味が詰まっていることを涙で実感した。
 文・砂上麻子/写真・市川和宏、砂上麻子
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