北星鉛筆・杉谷龍一さん「大人の鉛筆」

2021年5月4日 07時21分
 大人になると触れる機会が少なくなる鉛筆。さらにパソコンなどの普及で、文字を書くことが減る中、鉛筆への愛と文化を守り続ける会社が、東京・四つ木にある。創業70年の北星鉛筆は、30人ほどの社員全員が開発者。先陣を切るのが五代目社長の杉谷龍一さん(44)だ。
 創業60周年の記念商品のアイデアを練っていた時のこと。敷地内の資料館に来ていた母親が子どもに言った「大人が持ってもおかしくない鉛筆があるといいわね」の声が耳に残った。「作るのはこれだ」。ヒット商品となる「大人の鉛筆」開発の糸口となった。
 創業間もないころに作った「ノーカット鉛筆」にヒントを得た。鉛筆のような見た目で、必要な分だけ太い芯をスライドさせて使う筆記具。当時はまだ鉛筆が主流だったことや、紙に強く押し当てると芯が引っ込んでしまう弱点などから、ほどなく販売を終えた。「改良すれば、大人が満足のいく鉛筆が作れるのでは」
 追求したのは鉛筆の書き心地と使いやすさ。外側は鉛筆と同じ木材、芯は太さ2ミリのやわらかい黒鉛を採用。ノック式のシャープペン仕様にし、感触も鉛筆そのものにした。発売した2011年に「日本文具大賞 デザイン部門優秀賞」を受賞。今ではオリジナルの木目調のほか、藍、赤、江戸小紋柄などのボディーデザインや、色鉛筆もそろえる。
 鉛筆の製造工程で出るおがくずを再利用した粘土、鉛筆に装着すると芯の黒鉛に反応し、タッチペンになる鉛筆キャップなど、数多くの独自商品を送り出す同社。敷地内には、使わなくなった鉛筆を供養する供養塔や神社がある。
 鉛筆作りは東京の地場産業。全国に約40社あるメーカーの8割が、葛飾・荒川など23区の東側に集中する。同社には「鉛筆はわが身を削って人のためになる。……鉛筆の有るかぎり、利益などは考えずに家業として続けろ」という代々守ってきた経営方針がある。「これからも、真(芯)の通った鉛筆作り一本やりです」 (新井すずみ)

◆ここがポイント


ぬくもりのある木軸。どこか懐かしいノック式。シンプルかつ上品な色柄

<大人の鉛筆>
 1本748円。替え芯5本入り165円。工場見学ができる資料館「東京ペンシルラボ」(400円)内の販売コーナー、東急ハンズなどで買える。「大人の色鉛筆13」は7777円。東京都葛飾区四つ木1の23の11。(電)03・3693・0777


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