保育、介護などの人材確保苦戦 採用側 高額仲介料に悲鳴

2021年5月5日 07時35分
 職業紹介事業者から求職者の紹介を受けた保育や介護、医療事業者のそれぞれ約七割が「紹介手数料が高額で経営上負担だ」と考えていることが、厚生労働省の調査で分かった。就職して間もない人に「もっといい条件の職場がある」と転職勧奨を繰り返す紹介事業者もある。専門家は「本来子どもや高齢者に使われるお金の一部が、高額な手数料として紹介事業者に流れる状況は理不尽だ」と指摘する。 (五十住和樹)
 千葉県内の私立認可保育所は昨年四月、中堅の紹介事業者のサイトを通じて正規職員を募集。採用した女性保育士一人の紹介手数料として約六十万円を事業者に支払った。だが女性は同十月に退職。職場でトラブルがあったわけでなく、理由は分からない。規定で三カ月以内の退職なら払い戻される手数料も戻らず、「さらに六十万円は無理」と欠員補充は諦めたという。
 同県内の別の保育所の園長(53)は「職歴欄に四、五カ所の園名が書かれた履歴書を見たことがある。紹介事業者を通じて入った人は転職のハードルが低い気がする」と言う。転職は個人の自由だが、「嫌なら次、求人はいくらでもあるし、という感覚ではないか」。
 紹介事業者への登録はインターネットやスマートフォンを使って手軽にできるため、多くの保育士や介護ヘルパーが就職先探しに活用している。埼玉県内の保育所に勤める女性(54)は前の職場を選ぶ時に登録。「就職お祝い金が五万円出る」と担当者から聞き驚いたという。今も「転職のご予定は」「いい条件の職場がある」などとメールが届く。特に年度末は多いといい、別の女性保育士(41)も「以前に登録した紹介事業者から電話が二日に一回、メールは毎日来る」と話す。
 厚労省の調査は昨年に約千三百の保育事業者、一昨年に約五百七十の介護事業者と約九百六十の医療事業者から回答を得た。職業紹介事業者や就職した人も調べた。紹介手数料は保育士などが平均で七十六万九千円(平均年収の21・2%)、介護ヘルパーが五十万一千円(同15%)、病院の看護師が九十一万八千円(同19・1%)だった。
 紹介事業者の順守事項として、同省は「就職した日から二年間は転職勧奨をしない」「お祝い金などは支給しない」と求める。だが調査では、早期の転職勧奨やお祝い金の話を受けた人は保育分野で6・4%、介護で6・5%、医療で6・8%いた。「知人が受けた」という人は各分野ともその四倍前後に上った。お祝い金は保育の場合、一万〜二万円が多いが、五万円以上も20・3%あった。
 介護人材派遣に詳しい淑徳大(千葉市)教授の結城康博さん(51)によると、コロナ禍で新規採用の困難さが増し、紹介事業者のニーズが高まっている。保育も介護も人材不足が深刻で、結城さんは「紹介事業者は足元を見ているところがある。転職勧奨自粛など厚労省の指導も強制力がない」と話す。
 同省の調査では、紹介事業者経由で就職した保育士の六カ月以内の離職率は22・1%。介護職員は38・5%に達した。埼玉県内の女性保育士(50)は「紹介時は基本給二十万円と聞いていたのに、実際は三十時間の残業代込みだったという話もある」と求人側にも問題があるとする。
 結城さんは「口コミで『人が人を呼ぶ』のが理想。休みが取れることや研修制度、職場の人間関係など働きやすい環境をつくり、定着確保の努力をするべきだ」と訴える。

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