<東海第二原発 再考再稼働>(28)国の政策に自治意識を 運転差し止め訴訟原告共同代表・大石光伸さん(63)

2021年5月5日 07時48分
 裁判に勝った負けたというよりも「司法としてはこう考える」というメッセージを社会に投げ掛けてくれたのではないか。
 東海第二原発(東海村)を巡り、水戸地裁が事故時の避難計画など防災対策の不備を理由に、日本原子力発電(原電)に運転差し止めを命じた判決は、原発の周辺地域に住む人たちが考えるきっかけを作ってくれたと受け止めている。
 特に、二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故で避難を余儀なくされた福島県の人たちには、救われるような判決になったと思う。一二年七月の提訴から判決までの八年半、「福島の人たちのために裁判をする」という思いで臨み、その気持ちは最後まで薄れることはなかった。
 判決の焦点になった避難の難しさは、国や電力会社が言ってきた「安全神話」の結末だ。
 東海第二の三十キロ圏内には、全国の原発立地地域で最多の約九十四万人が暮らしている。こうなったのは「原発の事故は起きない」という前提があり、周りに住宅がたくさんできても規制しなかったからだ。「安全神話」により危険な環境を生み出し、住民が事故時にまともに逃げられない状況にしてしまった。
 ただ、今回の判決は首都圏にある人口密集地帯の原発特有の問題ということにしてほしくない。
 避難計画の策定が義務付けられている東海第二の三十キロ圏の各自治体も、原発政策を進める国の言うことを聞くだけでなく、住民とともに自治をするという意識を持ってほしい。自分たちのことを自分たちで決めないと、福島の二の舞いになる。
 原電は判決の翌日に、条件反射的に東京高裁に控訴したが、自分たちが推進してきた原発で、裁判所が「避難計画がきちんとしていないとだめだ」と言わざるを得ない現状について十分に考えてほしかった。そういう誠実さがないと、住民の安全を守る姿勢を感じることはできない。
 一方で、今回の判決では、地震や津波の想定の甘さなどについては、原告の主張が退けられた。原電の主張をそのまま根拠にしており、もっと正面から原告の問題提起を考慮してほしかった。
 十一都府県の原告二百二十四人のうち三十キロ圏内の七十九人について「人格権侵害の具体的危険がある」と訴えを認めたが、それ以外の請求は棄却した。原告のうち訴えを退けられた九都府県の住民百二十人は、判決を不服として控訴した。
 控訴審では、一審判決を確定させるために、避難の難しさをさらに検証していきたい。地震など東海第二の危険性についても引き続き主張していきたい。
 原発は地域で落ち着いて暮らせる状況を奪う。暮らし向きをよくするために、危険なものと隣り合わせにすることはおかしい。豊かな社会をつくるために必要なのは、物質的な豊かさだけではない。たった一人であっても、命や平穏な生活を守ることが大切だ。 (聞き手・松村真一郎)
<おおいし・みつのぶ> 1957年、東京都生まれ。筑波大卒業後、83年に常総生活協同組合(守谷市)に入る。副理事長や顧問を経て、現在は組合員として活動している。つくば市在住。

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