最低投票率、投票機会の確保…重要論点を棚上げ 国民投票法改正案成立へ

2021年5月7日 06時00分
 改憲手続きを定めた国民投票法改正案が自民、立憲民主両党の合意で、今国会中に成立する見通しとなった。テレビCM規制など一部の課題を検討事項として付則に盛り込む修正は行われたが、明記された「3年をめど」とする法整備が実現するかどうか確約はない。共通投票所の設置で投票所が削減されれば、高齢者らが一票を投じにくくなり、国民生活に直結する改憲の是非の民意が正確に反映されない恐れもある。(川田篤志、山口哲人)

◆「3年めど」の法整備も不透明

 「憲法本体の議論を粛々と進めていくべきだ」。与党筆頭幹事を務める自民党の新藤義孝氏は、今回の法改正を機に具体的な改憲論議を本格化させる考えを強調した。与党側は「3年をめど」に検討する課題を置き去りにして国民投票に踏み切っても問題がないとの方針を示す。
 一方、法案修正を条件に賛成した立民は、改憲手続きのさらなる見直しを実現した上でなければ、国民投票をやるべきではないとの立場。「CMや運動資金などに一定の規制が設けられなければ、公正・公平な国民投票は期待できない」(奥野総一郎氏)と訴える。

◆高齢者が一票を投じにくくなる可能性

 改正案は利便性の向上ではなく、投票の環境の悪化を招くとの懸念も根強い。駅や商業施設などに「共通投票所」が導入されれば、各地の投票所が集約され、移動手段が限られる高齢者らは逆に足を運びにくくなる可能性もある。期日前投票所の開始時刻の繰り下げや、終了時刻の繰り上げといった弾力的な運用も認められており、民意を示す機会が制限されかねない。
 海外勢力の影響排除を念頭にした「運動の資金規制」や、一定の投票率に達しない場合に無効とする「最低投票率」導入、なり手不足を解消するための投票立会人の選任要件の緩和などを含め、課題は山積みだ。

◆識者「議論が不十分」

 共産党を除く全党が事実上、足並みをそろえたとはいえ、このまま国民投票が実施されれば、賛否両派の活動の公正さが十分担保されない。識者からは課題を棚上げにしたことを問題視する声が相次ぎ、名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「CM規制も外国人の運動資金の規制も国民主権の観点から問題で、議論が不十分」と批判した。
 「改憲問題対策法律家6団体連絡会」事務局長の大江京子弁護士は「少なくとも付則によって改憲手続法の抜本的な見直しが国民投票の先決事項であることが明らかとなった」と指摘した。

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