<さいたま市長選 132万人県都の選択>(上)待機児童問題 「保活」の半年、「必死」

2021年5月7日 07時19分

さいたま市の保育所入所申込書類。第30希望まで記入する欄がある

 「選ぶというより、『入れるところを探す』というほうが近い。第十希望くらいまでに入れれば御の字だと思っていた」
 この春、自宅のあるさいたま市での「保活」を終え、十一カ月の長男を私立の認可保育所に入れた私立校教諭の男性(40)は「激戦」を振り返る。男性と妻(39)は二〇一二年、同市南区に新居を構えた。互いの通勤に便利な立地で選んだが、一九年に大宮区に転居。南区は保育所入所が市内で最も厳しいと聞いていたからだ。「保活」は事実上、長男が生まれる前から始まっていた。
 育休をとっていた妻の今年四月からの復職に備え、いよいよ「保活」は本格化。昨年九月から施設見学を始め、保育時間や土曜保育の有無など希望に合う保育所の情報を集めた。
 市の施設利用申込書の記入欄は第十希望まであり、別紙も合わせると第三十希望まで書ける。夫妻は全ての欄を埋め、どこにも入れなかった場合に備えて認可外施設も見学した。市が利用調整しない認可外園の受け付けはいつ始まるか分からず、毎日ホームページを確認。申込日は仕事を休んで朝一番で並んだ。
 入所先の選考は、家族構成や保護者の就労状況などが点数化され、点数が高い人から決まる。結果的に第四希望が通った男性は「幸運で感謝している」。妻の復職は長男が保育所に入れることが前提で、勤務先とも調整していただけに、入所が決まるまでの半年あまりを「必死だった」とかみしめる。
 「子育て楽しいさいたま市」をうたい、子育てしやすい街の実現を目指すさいたま市。しかし、待機児童数は一七年にいったんゼロとなったものの、国の基準変更もあって翌年からは三百人台で推移。昨年四月一日時点では全国最多の三百八十七人だった。共働き世帯の増加に伴うニーズの高まりに、対応が追いつかない状況が続いた。
 市は不名誉な「日本一」を返上しようと、昨年度は六十一の保育施設を新設して定員を約三千五百人増やし、保育士不足の解消のため民間事業者には保育士宿舎の整備費を補助。今年四月一日時点の待機児童数は十一人と大幅に減少した。本年度も新たに十七施設を整備し、定員を千三百五人増やす予定だ。
 ただ、市は今回の大幅減の背景には、新型コロナウイルス感染を心配する保護者の間で保育所の利用控えが広がったこともあるとみる。また「隠れ待機児童」とも呼ばれ、認可外保育施設などに通う「利用保留児童」は千四百九十九人(前年比七百九十人減)に上る。
 生活や交通の利便性などが人気で、市の人口は〇一年の合併以来、毎年右肩上がりに増えている。しかし、共働き世帯や子育て世帯が安心して暮らし、働くのが難しい街という印象が広がれば、定住先として敬遠されかねない。
 市は保育需要を予測し、私立保育所増設の補助や幼稚園の活用・連携など施策を講じているが、市民の生活スタイルも多様化する中、保育ニーズにどこまで応えられるかは未知数だ。「保活」を終えた男性は「保護者のニーズに合った保育所を配置してほしい。(前年はどの園に何点で入れたかなど)保護者への情報開示も進めてもらえれば」と注文する。

◇ ◇

 旧浦和、大宮、与野の三市が合併し、二十周年を迎えたさいたま市の市長選が九日、告示される。政令市移行や旧岩槻市の合併を経て「成人式」を迎えた街の課題を考える。

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