<社説>緊急宣言を拡大 「我慢」無駄にせぬよう

2021年5月8日 07時17分
 政府は緊急事態宣言の対象を六都府県に拡大することを決めた。新型コロナウイルスの感染症対策を徹底するのは当然だが、なぜ感染拡大を抑えられないのか。対策の効果も検証すべきではないか。
 宣言を発令中の東京、大阪、京都、兵庫の四都府県は十一日までの期間を三十一日まで延長し、愛知、福岡両県を対象に加えた。
 菅義偉首相は大型連休前、三度目となる宣言発令の狙いを、強い対策を「短期集中」で実施すると説明したが、十七日間の宣言期間では十分に感染拡大を抑え込めなかったことになる。
 当初から専門家は、対策が効果を得るには最低三週間は必要と指摘していた。科学的な知見を軽視した結果、宣言延長や対象拡大に追い込まれたのではないのか。
 厚生労働省の専門家会議によると宣言発令後、東京や大阪など都市部の人出は減ったが、変異株拡大もあり、新規感染者数は減少に転じていない。連休中、多くの人が外出を控えるなど「我慢」を強いられたのに、対策の効果は十分に上がっているとは言い難い。
 「コロナ疲れ」が広がる中でのさらなる期間延長だ。政府はこれまでの対策にどの程度の効果があり、何が欠けていたのか。まずは国民に丁寧に説明すべきだ。
 その姿勢がなければ、宣言期間を延長しても、国民の理解や協力は得られないのではないか。
 すでに休業中の店舗は、期間延長でさらに負担を強いられる。
 愛知県など新たに宣言対象に加わる地域では、酒類の提供ができない居酒屋などで休業せざるを得ない店舗が出てくるだろう。経営支援の手を緩めてはならない。
 もう一つ、政府が取り組むべき課題は医療態勢の拡充だ。大阪市では感染者の急増で、入院待ちの人が入院できずに自宅などで亡くなるケースが問題化している。
 専門家会議では、医院やクリニックなど診療所の役割強化が提案された。診療所は規模が小さく、人材も限られるが、対応能力を上げ、施設内の動線などを工夫すれば、感染者の治療が期待できる。
 宿泊施設や自宅で療養する患者の診療も診療所が分担すれば、病院の負担を軽減できる。なにより患者の安心につながるのではないか。
 政府は、病院同士の連携や広域での患者搬送確保などと併せ、医療態勢の強化を続けるべきだ。国民の「我慢」を無駄にせぬよう、今度こそ確実に、十分に、感染拡大を抑え込まねばならない。

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