<さいたま市長選 132万人県都の選択>(中)防災 自治会任せは先細り

2021年5月8日 07時37分

仮設トイレを設置するマンホール(中央奥)の位置を確認するマンション管理組合の理事ら=さいたま市中央区で

 災害に強いとされながら、二〇一九年の台風19号では千戸近い床上浸水被害が出たさいたま市。当時、軽微な排水被害があった中央区のマンションでは今年四月、管理組合の理事を対象にした「防災ツアー」があった。
 ツアーは菅原英子さん(62)ら住民四人でつくる防災委員が企画した。備蓄品や機械式駐車場の防火・防水設備を見て回り、屋上から立地や避難所、近隣の地形や豪雨であふれる川の位置を確認。参加者らは「状況がよくわかった」と声をそろえて感心した。
 このマンションには二百五十世帯あまりが入居。菅原さんら委員は住民の防災意識を高めようと試行錯誤しているが、マンション単独では市が結成を呼び掛ける「自主防災組織」になっていない。そのため市の補助金や資材提供はなく、防災費用の捻出が悩みの種だ。
 自主防災組織は、災害発生時に自治体と連携しながら対応にあたる住民の任意団体。一九九五年の阪神大震災や二〇〇七年の新潟県中越沖地震など大規模災害では、避難所の設置や管理、救援物資の配分、住民の安否確認、自治体への要望の取りまとめなど重要な役割を担った。
 さいたま市内の結成率は92・2%(昨年四月一日現在)に上るが、マンションなど集合住宅の増加に伴う難しさもある。市が自治会単位での結成を前提にしているためで、市内ではマンション単独で自治会をつくり、自主防災組織を運営する例もあるが、一部に限られるという。
 近年、さいたま市は世帯数に占める分譲マンション戸数の割合を示す「マンション化率」が20%前後で推移。全国的にも高水準で、さいたま新都心地区(中央区・大宮区)やJR西大宮駅周辺(西区)では大規模物件の建設が進む。国の統計によると、市内では共同住宅の新築が相次ぎ、最近十年は毎年五千〜六千戸増加した。市は今後もこの傾向が続くとみている。
 菅原さんのマンションは一棟丸ごと地元の自治会に入り、自主防災組織の一員となっているが、エレベーターの停電や高層階からの避難など、集合住宅と一戸建てでは災害時の事情で異なる点も多い。また、地域によっては自治会がマンションなど新住民の加入を渋る例もあるといい、市自治会連合会の松本敏雄会長は「(旧住民が)自分たちのやり方を変えたくないと、かたくなになってしまった例もあった」と話す。
 そもそも市内の自治会加入率は昨年四月一日現在で61・4%。人口増の一方で、最近三年は加入率が毎年1ポイントずつ減っている。会員の高齢化も進み、「自治会任せの防災は先細りになる」と市議会でも繰り返し指摘されている。
 市防災課が一四年三月にまとめた「さいたま市直下地震(マグニチュード7・3)」が発生した場合の被害想定では、揺れやその後の火災で市内の十一万六千棟超の建物が全半壊し、死傷者は一万人に達すると見積もる。同課は建物の強靱(きょうじん)化が進み、実際の被害は想定よりも減るとみるが、多数の避難者や帰宅困難者の発生という問題もある。
 街の様相が変化し続ける中、地域の特徴に合わせた災害への備えが急がれる。菅原さんらは「近隣マンションとの情報共有の仕組みづくりや防災用品の共同備蓄など、市に間に入ってもらえれば助かることは多い」と話した。

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